抄録
我が国の公共調達は,明治22年に制定された会計法にて規定された予定価格の上限拘束性の制約が義務付けられている.この制約は,先進諸外国では既に廃止されており,また,再入札による機会損失,行政コスト等を発生させる原因となることによる弊害も指摘されている.
一方,現在,国土交通省では,公共工事の品質を確保するための方策として総合評価落札方式を推進している.この方式では,入札価格と技術力の双方を評価した点数で落札企業が決定されるため,入札価格に制約を与える条件が付加されることとなる.
本研究では,総合評価落札方式における落札企業の決定過程を直近のデータの解析結果をもとにしたシミュレーションモデルにて記述し,予定価格の上限拘束性が廃止された場合の予算管理上の課題,及び落札企業の技術評価点順位が変化する状況を定量的に把握した.