2020 年 76 巻 2 号 p. I_72-I_81
筆者らは,これまで土木事業において事業を効率よく進め,かつ関係者間での合意形成を図る一つとして,モデル空間の構築手法や利用方法について研究してきた.その中で,事業を効率よくマネジメントするには,専門の組織ないしは個人が必要であること,さらに,その役割を明確にすることなどの必要性について提唱してきた.国土交通省が公開しているガイドラインでは,地形モデルや構造物モデルなどのCIMモデルの構築手法,設計及び施工など一部分への利活用例を中心に示されている.一方,事業全体を通しての利用例は事業の守秘義務などの関係から示されていない.
本論文は,既往研究でICTを活用した事業例を題材にBIM/CIMで取り扱うモデル空間について利活用法,その在り方について分析した.その分析結果を踏まえ,事業全体をマネジメントするためのモデル空間として包括的モデル空間を提案し,現在行われている事業の受発注者へのヒアリングをもとに,その内容について述べる.