2022 年 78 巻 2 号 p. I_35-I_53
2021年11月時点で,日本も含む150カ国以上が2050年等の年限付きのカーボンニュートラル目標を宣言している.この目標に資するためには,建設分野においても,建設現場のみならず,サプライチェーンも含む低炭素化に向けた検討が必要である.本稿は,建設分野の3分の1を占める公共調達を通じた低炭素化の取り組みに関して,海外政府の施策を我が国の施策と比較し,我が国が講ずるべき施策の検討を行うことを目的とする.このため,本稿では,まず,公共事業に関係する低炭素公共調達に関連する取り組みに関して,国際機関の調査及び既往文献から,関連する193の事例を抽出した.次に,建設分野に関連する先導的な取組を有する20カ国のうち,人口規模及び建設投資額の観点から我が国建設分野への適用可能性が見込まれる米国,ドイツ,オランダ,英国,韓国及びスペインの6カ国を「先導国」と位置づけ,これら政府の低炭素公共調達に関連する取り組みについて,建設分野に係るものを中心に調査を行った.最後に,これらの結果に基づき,我が国の関連施策との比較を行い,我が国が先導国と同様な取り組みを実現するために必要な施策について明らかにした.