2007 年 63 巻 3 号 p. 401-415
メディアによる災害報道には,被災地住民に対して適切な対応行動を促したり,不安を軽減したりする効果だけでなく,被災地以外の住民に対して災害が発生したときの状況や被害の様子を伝えることにより,自らの経験だけでは知ることのできない災害に関する知識を提供する効果がある.本稿では,このような災害報道の防災教育効果に着目し,2004年に発生したインド洋津波に関する報道を事例に,その報道が被災地以外の住民の態度と行動に与えた影響を把握した.
その結果,災害報道を視聴した住民の意識や知識を高める効果は確認されたものの,具体的な行動変容はあまり見られなかったことが明らかとなった.そこで,災害報道に住民の行動変容を促す効果を期待するのであれば,対応行動に対するより具体的な情報の提供が必要であることを示した.