土木学会論文集D
Online ISSN : 1880-6058
ISSN-L : 1880-6058
63 巻, 3 号
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和文論文
  • 塚井 誠人, 小林 潔司
    2007 年 63 巻 3 号 p. 255-274
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/20
    ジャーナル フリー
     社会資本の整備効果は,時間遅れを伴い長期的に出現する.本研究では社会資本の整備がもたらす長期生産力効果を考慮して,社会資本の生産性を測定する方法を提案する.そのために,地域生産関数における社会資本の長期的生産力効果を実数和分を用いて表現する.その上で,地域生産関数を外生変数を有する自己回帰実数和分移動平均(Auto-Regressive Fractionally Integrated Moving Averaged model with eXogenous variables:ARFIMAX) モデルとして定式化し,多地域時系列データを用いて推計する方法を提案する.実証分析の結果,地域生産関数に長期記憶性が存在しないという仮説を棄却できることが判明した.さらに,社会資本の生産力効果の長期記憶性を無視すれば,社会資本の生産性を過小評価する危険性があることが判明した.
  • 片田 敏孝, 桑沢 敬行, 金井 昌信
    2007 年 63 巻 3 号 p. 275-286
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/20
    ジャーナル フリー
     災害による人的被害の規模は,発災時の都市アクティビティに応じて大きく変化する.したがって,現実的な被災シナリオ想定を実施するためには,平常時における住民個々の活動状況を考慮することが必須である.本研究では,このような認識のもと,発災時刻における都市アクティビティを考慮した的確な被災想定を実施するためのプロセスを検討するとともに,そのプロセスに基づき被災シナリオ想定を実施するためのシナリオ・シミュレータを開発している.このシミュレータは,国勢調査などの統計情報に基づき,時刻に応じた住民の都市内分布を表現することによって津波発生時刻による人的被害量を推定することが可能であり,効果的な地域防災計画を立案するための戦略策定ツールとして活用することができる.
  • 赤松 隆
    2007 年 63 巻 3 号 p. 287-301
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,一般構造の交通ネットワークに対する“ボトルネック通行権取引制度 (TBP)”を考察する.TBPは,渋滞解消のための新たなスキームとして赤松・佐藤・Nguyen (2006) によって提案されたが,その理論的特性は,単一ボトルネックを対象とした場合しか明らかにされていない.本稿では,まず,単一ODペアを持つ任意構造のネットワークにおいて,TBP導入下の均衡状態が最も効率的な資源配分を達成できることを明らかにする.そして,この結果は,多起点・多終点の場合,OD需要が弾性的な場合,利用者の希望到着時刻が分布する場合等のより一般的な状況でも成立することが示される.さらに,混雑料金制とTBPとの理論的関係を示した上で,TBPが混雑料金制に対して持つ優位性を明らかにする.
  • 長江 剛志, 赤松 隆
    2007 年 63 巻 3 号 p. 311-327
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,交通状況の動学的不確実性を明示的に考慮した上で,リアルタイム観測情報を活用した動的ランプ制御ルールを導き,その特性およびメカニズムを明らかにする.具体的には,まず,従来の2リンク・ネットワークを対象とした動的システム最適交通配分モデルを,旅行時間が不確実に変動する枠組へと一般化し,確率制御問題として定式化する.こうして定式化された問題の最適性条件を,数理計画分野で知られる一般化線形相補性問題として再定式化する.この分析結果を活用して,最適制御ルールおよびネットワーク全体の効率性を評価する効率的数値解法を開発する.最後に,数値解析を通じて,最適制御ルールおよびリアルタイム観測情報の価値の特性を明らかにする.
  • 小林 潔司, 湧川 勝己, 大西 正光, 伊藤 弘之, 関川 裕己
    2007 年 63 巻 3 号 p. 328-343
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,平成16年10月に発生した豊岡市水害を対象として,被災世帯の復旧資金の調達状況と,世帯の復旧過程に関する実態分析を実施する.その際,ショートサイド原則に基づくサンプル選択モデルを用いて,世帯が損壊した家屋・家財を復旧するために必要とする必要調達額と現実に支出できる調達可能額を推計するとともに,両者を比較することにより復旧資金の不足額を明らかにする.その結果,豊岡水害において,多くの被災世帯が,復旧に必要となる資金を金融機関から調達できないという流動性制約に直面していることが判明した.さらに,流動性制約に直面する世帯は,復旧過程が遅延し,長期間にわたり生活水準が低下するという流動性被害が発生していることが明らかとなった.
  • 石 磊, 大西 正光, 小林 潔司
    2007 年 63 巻 3 号 p. 344-359
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,性能規定型維持管理契約において,異時点の契約間に介在するペイオフ外部性と事業者の私的モニタリングの可能性により,契約締結時の逆選抜と契約後のモラルハザードが発生することを指摘する.維持管理契約を短期契約の繰り返しにより構成した場合,罰則条項と競争入札を導入しても,逆選択とモラルハザードを抑止できないことを示す.一方,短期契約を統合化した長期契約を締結することにより,ペイオフ外部性を内部化することが可能となる.この場合,事業者が長期契約の実施にコミットできる場合,長期契約の実施により,逆選抜とモラルハザードを抑制することが可能となる.しかし,長期契約の実施に関するコミットメントが不可能な場合には逆選抜とモラルハザードが発生することを指摘し,あわせてその解決策についても考察する.
  • 山田 晴利, 平井 節生, 牧野 浩志, 山崎 勲, 水谷 博之, 大類 寛幸
    2007 年 63 巻 3 号 p. 360-378
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/20
    ジャーナル フリー
     交通の安全性の向上は,高度道路交通システムの重要な目標のひとつである.走行支援道路システムの開発の一環として,前方障害物衝突防止支援システムの研究開発が実施されてきた.開発されたシステムの性能をドライビングシミュレーター,試験走行路等で検証したうえで,2005(平成17)年から社会実験が開始された.本論文では,こうしたシステムの要素技術に必要な機能とその実現方法について述べ,さらに首都高速道路参宮橋地区における社会実験で交通事故が大幅に減少したことを示し,導入された前方障害物衝突防止支援システムが事故の減少にどの程度寄与したのかを分析した.路側表示板による前方障害物の警告表示は舗装の打ち替え以上の減少効果があり,VICSを用いた情報提供はこれらに次ぐ効果をもつことを見いだした.
  • 平野 勝也, 犬飼 武
    2007 年 63 巻 3 号 p. 379-390
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/08/20
    ジャーナル フリー
     土木構造物デザインにおいては,「シンプル」が良いとしながらも「単調さ」は避けるべきと一見矛盾したことが言われている.本研究は同様の矛盾を孕む都市内高架橋を対象に,輪郭線解像度を定義し,輪郭線解像度別にフラクタル解析,部材の方向性分析を行うことにより,この矛盾の一端を解きほぐし,併せて評価実験を用いて,評価の高いデザインの方向性を見いだそうとするものである.その結果,修景された高架橋は非修景のものと比べ評価も高く,そのデザイン的な操作は,粗い解像度においてはフラクタル次元をやや低くシンプルにするもの,あまり変えないものがあった一方で高解像度域に関しては,全て,部材の方向が揃った細やかなディテールという共通の特徴が明らかとなった.
  • -2004年インド洋津波災害に関する報道を事例として-
    金井 昌信, 片田 敏孝
    2007 年 63 巻 3 号 p. 401-415
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/20
    ジャーナル フリー
     メディアによる災害報道には,被災地住民に対して適切な対応行動を促したり,不安を軽減したりする効果だけでなく,被災地以外の住民に対して災害が発生したときの状況や被害の様子を伝えることにより,自らの経験だけでは知ることのできない災害に関する知識を提供する効果がある.本稿では,このような災害報道の防災教育効果に着目し,2004年に発生したインド洋津波に関する報道を事例に,その報道が被災地以外の住民の態度と行動に与えた影響を把握した.
     その結果,災害報道を視聴した住民の意識や知識を高める効果は確認されたものの,具体的な行動変容はあまり見られなかったことが明らかとなった.そこで,災害報道に住民の行動変容を促す効果を期待するのであれば,対応行動に対するより具体的な情報の提供が必要であることを示した.
  • 中川 大
    2007 年 63 巻 3 号 p. 416-425
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/20
    ジャーナル フリー
     交通社会資本整備の実施にあたっては,その効果を計測・予測して事業の有効性を示すことが求められるが,実際には,効果の存在やその大きさを厳密に立証することは難しい.そのことを踏まえると,現実の意思決定において強い立証を求めることは必ずしも適切とは言えず,どの程度の立証が必要であるかを議論することが重要である.本研究では,まず法律分野における立証責任の基礎理論を整理するとともに,交通社会資本整備における立証責任のあり方についての考え方を示す.次に,現在の交通社会資本整備における事実上の立証責任の状況について文献等を用いて検証する.さらにそれらの結果から,社会資本整備効果の立証責任は社会通念の所在との関係が重要であることを示し,その社会通念の形成についての現状と課題を示す.
  • 戸田 鉄也, 平野 勝也
    2007 年 63 巻 3 号 p. 426-434
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,認知心理学における注意と記憶の理論的枠組みを援用し,商店街における空き店舗をはじめとした店舗の認知特性の解明を試みた.その結果,注意は主に色彩やコントラストが支配的要因であること,記憶の内容は店舗がもつ情報の量や複雑さが関係し,情報量が多く複雑で言語的な符号化が困難な店舗は画像的な符号化がなされ,情報量が少なく単純な空き店舗や住宅は言語的な符号化により記憶されていると推察されることが明らかになった.空き店舗については,「商店街」の文脈を逸脱した存在であるため注意を向けられ,言語的符号化の傾向が見られることから,「空き店舗」という言葉が持つ負のイメージが活性化されると考えられる.
  • 李 鎮昊, 全 炳徳
    2007 年 63 巻 3 号 p. 435-444
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/20
    ジャーナル フリー
     本研究は日本の陸地測量部が当時の朝鮮半島で行った測量の足跡である.特に,当時の朝鮮の政府官僚の対応および地方民の抵抗等について焦点を当てている.また,当時の朝鮮の近代測量の足跡と日本の測量足跡とを対比しながら,朝鮮と日本が取られた近代測量の認識を史料に基づいて考察した.これらの考察より,日本の陸地測量部の朝鮮半島での測量内容や活動,また,それに伴う当時の朝鮮国内の政府官僚および地方民の反応などを明らかにした.この結果から,近代測量において朝鮮の測量認識は日本に比べて非常に低く,これが日本より測量技術の遅れを招いた原因のひとつである分析した.
     また,本研究では朝鮮半島で活動していた日本の測量技術者たちの測量内容を明らかにし,彼らが活動していた朝鮮と日本の近代測量交流史についても史料に基づいて考察した.
和文報告
  • 佐野 信夫, 馬場 弘二, 山田 隆昭, 吉武 勇, 中川 浩二, 西村 和夫
    2007 年 63 巻 3 号 p. 391-400
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/20
    ジャーナル フリー
     トンネルにおける点検作業は,効率的に実施することが望まれている.高速道路トンネルにおける覆工コンクリートの詳細点検は,高所作業車を用いた近接目視と打音点検が主体となっている.本研究で提案する点検システムは,1)走行速度60km/h程度でも計測できる車両を用いて,2)覆工コンクリート表面画像の机上点検から健全度の劣るスパンを特定し,3)そのスパンに限定して従来の近接目視・打音点検を行うものである.この点検システムにより,点検技術者による現地点検回数の低減に伴う点検費用の削減,点検・調査の迅速化,安全性判断の早期化,詳細点検計画の効率的な立案などが可能となった.
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