抄録
実構造物におけるエポキシ樹脂塗装鉄筋(ECR)の防食性能を把握するため,発錆限界塩化物イオン量の視点から,北米の各州で実施された実態調査の結果を収集,再分析した.凍結防止剤散布による床版中のECRの腐食は,コンクリートのひび割れ,ECRの塗膜剥離の有無にかかわらず,ECR周囲の塩化物イオン量にある程度依存すること,ECRの発錆限界塩化物イオン量は普通鉄筋よりも大きいことがわかった.また,フロリダ沿岸部で早期劣化が見られた橋脚群におけるECRの腐食事例でも,かぶりコンクリートの低い塩分浸透抵抗性などの理由によりECRの周囲に多量の塩化物イオンが存在していた.ECR周囲のコンクリート中の塩化物イオン量をECRの発錆限界値以下に抑制することによって,沿岸部橋脚にもECRを効果的に適用できることがわかった.