2011 年 67 巻 6 号 p. II_163-II_172
近年,農山村の衰退が深刻化しており,その結果農山村の有する公益的機能がもたらす価値も減少していると懸念されている.これに対し本研究は,農山村の活性化を通じて公益的価値の増大を図れないかを検討したものである.具体的には,農山村と都市からなる二地域の空間的応用一般均衡(SCGE)モデルを構築し,(1)農山村部を中心とした交通整備,(2)農山村部の労働需要あるいは農山村部への労働供給を効率化させる労働政策,(3)農山村部の第一次産業への補助金支給策の3政策について,山梨県を対象に数値計算を実行した.その結果,労働政策は農山村部の活性化という面では大きな便益をもたらすこと,交通整備は公益的価値を考慮することにより3%ほどの追加便益を得ること,補助金支給策は税負担によって負の便益となっていたものが公益的価値を考慮することで正の便益になることなどが明らかとなった.