抄録
本研究では,乾季デリーを対象に地上気温分布構造の現況把握とヒートアイランド対策ポテンシャルの推定を試みた.2008年5月と2010年3月における地上気温の多点計測の結果,夜間を中心に都市気候学的な土地利用分類であるLocal Climate Zoneに対応した合理的気温変化の特徴が見出された.加えて,デリー市街地の夜間昇温が都市キャノピーと人工被覆の作用によることが推測された.これら地上気温の時間的・空間的変化の傾向は,著者らの都市気候・ビルエネルギー連成モデルにより概ね再現可能であった.人口1.5倍増と一人あたりエネルギー需要の東京現況水準への到達を想定した近未来シナリオ下での連成モデルによる数値実験の結果,乾季5月のデリー市街地の日平均地上気温について約1℃の昇温が予測された.同昇温は,地表面の緑化・高アルベド化対策を以ってしても0.1℃前後しか緩和されないものと推計された.