抄録
本研究は,新しく開発した建築用保水性コンクリート板を用いて,小学校の実物建物を対象に,屋上面からの熱流入の軽減量と室内温熱環境改善効果の実測と解析を行い,省エネルギー対策,室内暑熱環境改善資材としての有効性を検証することを目的として実施した.2010年夏季の7~9月の実測結果から,表面温度,スラブ面温度の低減効果は保水板下で顕著に現れ,対照とした砂利敷き屋根と比べて,表面温度で22℃,防水層表面温度で15℃程度の温度差を生じた.保水板区と対照区の室内環境を比較した結果,天井面温度,室内平均輻射温度は常に保水板区の方が低かった.窓を開けて換気している時間帯の差は小さかったが,換気を中止すると速やかに顕著な差が現れた.密閉状態でPMVでは0.5程度,WBGTでは0.5℃程度の低減効果が,換気状態ではWBGTで0.3程度の低減効果が確認された.