抄録
本研究では被災6県の津波堆積物中の重金属類とその溶出挙動について検討するとともに,それらがヒトへ曝露された際の健康リスクについて評価した.津波堆積物の溶出量はヒ素および鉛で土壌環境に係わる基準値を超過する試料もあったが,含有量についてはほとんどすべての試料でそれを下回っており,その幾何平均値はヒ素で1.1 mg/kg,鉛で6.7 mg/kg,カドミウムで0.064 mg/kg,クロムで1.7 mg/kgであった.これらの結果より推定した重金属類のヒトへの全曝露量はきわめて小さく,ほとんどすべての採取地点において設定したリスク値を大きく下回っていた.以上のことから津波堆積物中に含まれる重金属類による土壌の直接摂食および井戸水摂取によるヒトへの健康リスクはそれほど大きくないものと推測された.