抄録
表層崩壊の危険度を力学的手法により示す方法を示した.タイ王国ペチャブン県において2001年に生じた斜面災害を研究事例として,表土層厚,斜面勾配,日降雨量,土質パラメータを入力情報とした無限長斜面安定解析により表層崩壊ハザードマップを作成した.結果を以下に示す.1)流域の西部に安全率の小さい斜面が分布する,2)実際に崩壊が生じた位置と小さい安全率が示されたグリッドは高い相関を示す,3)安全率1.00を安定・不安定斜面を判別する閾値とした場合,70%の確率で崩壊地と不安定グリッドが一致し,20%の確率で非崩壊地を不安定グリッドと誤判定する,4)先行研究で示された土質パラメータを用いたにもかかわらず,ハザードマップの精度は良好である.この結果は,今後のタイ王国における斜面災害対策の策定に利用可能である.