2012 年 68 巻 7 号 p. III_297-III_305
広大な干潟を有し,自然再生の取り組みが活発な山口湾では,アサリ・カブトガニの浮遊幼生の輸送などに関連して,基礎情報としての流動特性の把握が強く求められている.そこで本研究ではまず,山口湾に3次元数値流動モデルを適用し,実測した流速時系列を良好に再現することに成功した.次に,この流動モデルを用いて,平均的な気象・海象条件下での流動場の計算,および中立粒子を浮遊幼生に見立てた粒子追跡を試みた.その結果,風や密度差の存在が,山口湾の流動場や粒子の輸送に大きく影響することを示した.さらに,既往研究では他の干潟との幼生の交換が少ないと考えられていた南潟について,近傍の中潟との粒子交換の可能性を明らかにした.