抄録
水田模型を用いた栽培実験を通じて,下水処理水の循環利用によって灌漑用水と肥料の使用量を削減した省資源型の水稲栽培の可能性を検討した。水田模型では暗渠から常に排水を行い,その水が再び田面に戻るようにした。下水処理水と河川水を1:1で混合した水を利用する系と,河川水のみを利用する系で,水稲の生育と収量,収穫された玄米の品質について比較を行った。窒素,リン,カリウム肥料の施用は慣行の栽培方法に従ったが,前者の系では必要な窒素施肥量を下水処理水でまかなうことができた。栽培実験の結果,どの比較項目でも2つの系には有意差が見られず,下水処理水の循環灌漑による水稲栽培への影響はなかった。ただし,どちらの系でも水稲は窒素吸収過多で過繁茂となり,玄米の食味も低下した。