抄録
山岳氷河の中長期的な融解度の推定は,海水面の上昇や,氷河周辺地域における水資源量の変化を考える上で重要である.一方,氷河の融解速度を推定する際には,氷河表面を覆うデブリと呼ばれる砂礫などの堆積物の影響を考慮する必要があるが,現地観測では広域のデブリ厚さ分布を推定することは困難である.そこで本研究は,Caucasus地域を対象に,衛星画像データを使用した広域のデブリ分布の推定を試みた.既往研究による現地観測との比較を行った結果,厚さ5cm以上のデブリが妥当に推定できることが確認できた.また,Caucasus全域では氷河全体の約20%においてデブリの断熱効果に伴い融解係数が約半分になることが判明し,同地域における氷河質量変化を求めるにはデブリが氷河融解過程に与える影響を適切に考慮することが重要であることが明らかになった.