2013 年 69 巻 6 号 p. II_265-II_273
近年,渡良瀬川において,ハリエンジュの繁殖が顕著で,冠水頻度のごく低い高水敷だけでなく低水路内の砂州上においても繁茂する例が見られ,従来からの優占種であるヤナギ類(主としてタチヤナギ)と競合している.そこで渡良瀬川中流域に観測区間を設け,そこを条件ごとに3つの領域に分けて現地調査を実施した.そして全ての個体の樹齢と位置座標を地図上にマッピングし,ハリエンシュの拡大動向,ヤナギとの競合関係,局所的な群落の形成過程,樹高や樹冠幅等のアロメトリー関係式の検討を行った.結果として,各エリアでの両種の群落の拡大過程の相違が明確になり,特にヤナギとハリエンシュが競合しているエリアではヤナギが縮小傾向なのに対し,ハリエンシュは高水敷まで拡大しており,今後も拡大していくことがわかった.