2013 年 69 巻 7 号 p. III_17-III_28
ヒ素による地下水汚染が深刻なベトナム・ハノイ市郊外にはため池が多く存在する. 本研究では, ハノイ市郊外の4つのため池において, 池の水質, 底質間隙水の水質, 底質の化学性状を調査し, ため池からの浸透水が地下水水質に及はす影響を推定した. ヒ素濃度は, 池水中では10μg/L以下と低かったが, 底質間隙水中では最大134μg/Lと高かった. 底質は有機物やヒ素の含有量が高く, 底質からのヒ素の溶出が示唆された一方, 底質によるヒ素の吸着も示唆された. 地下水のヒ素濃度(中央値)が27μg/Lおよび43μg/Lと高かった地域は, 塩化物イオン濃度や安定同位体比からため池浸透水からの涵養量が大きいことが示唆され, 高濃度のヒ素やDOCを含むため池浸透水が地下水のヒ素汚染に寄与している可能性が示された.