抄録
高い遡上率を有する魚道を設置するには魚道の適切な幾何学形状の把握が必要となる.既往の研究,各種魚道マニュアルにおける記述では,プール底面の傾斜はほとんど水平である.しかしながら,プールの底面傾斜が遡上率に対して与える影響についてなされた研究および言及はないのが現状である.本実験では魚道のプール底面傾斜と流量を系統的に変化させ,底面傾斜がアユの遡上特性に及ぼす影響について検討した.その結果,最も遡上率が高い値を示したのは,プール底面を上流側に下り傾斜に設置した場合であった.これは,プール底面を上流側に下り傾斜に設置することにより,アユの休憩場所が上流側に近づき遡上経路が短くなったためであると考えられる.