抄録
河川の水・物質輸送と河川生態系の因果関係に基づいて流域スケールでの河川環境管理を行うには,流域内に数多く存在する堰堤の影響を適切に把握,評価する必要がある.そこで本研究では,既往の河道一貫物質循環モデルを基礎として,堰による不等流効果を考慮した河川生態系シミュレーションを実河川流域で実施した.兵庫県の揖保川流域を対象として解析を行った結果,堰の背水区域における滞留時間の増加により粒状態有機物の堆積・分解が促進され,流域内の食物網に対し影響を与えることが明らかになった.また,単独の堰の効果による物質循環への影響は,支川の合流によって部分的に解消されるものの,流域内に多数の堰が存在するため,流下方向に蓄積・拡大しながら伝搬することが定量的に示された.