抄録
水道事業として,水道施設老朽化や人口減少,節水機器の普及による水需要の減少などの外部環境変化に適応するためには,今後,中長期的な視点から水道施設の再構築を検討する必要がある.本研究では,実管網を対象とした管路の縮径と管路形状に関する管網解析を行い,人口減少社会における管網システムのあり方について,管内における濁質の堆積や流速による濁水発生を予防するという管路の自己洗浄性と,災害レジリエンスを確保するという耐震性の2つの機能から検討した.その結果,管路再設計に耐震管路を用いない条件下では,管路の自己洗浄性と耐震性はトレードオフ関係にあることを明らかにした.一方,検討したケースにおいて,150mm管路を100mm管路に変更し,かつ,配水管延長密度を低減した条件下で,自己洗浄性と耐震性のいずれの機能も確保することが可能となる条件が存在することを示し,今後の管路再構築における管路機能高度化のひとつのあり方を示しえた.