抄録
斜路に石を埋め込んだ椹野川水辺の小わざ魚道は、出版物を通じ高く評価されているが、その有効性や設計法は明らかではない。当該魚道でアユの放流実験を行い、有効性を検証すると同時に、流速と気泡に対する選好性を用いて当該魚道の遡上率の説明を試みた。その結果、当該魚道は平水時には遡上可能であり、斜路中央部で最も遡上しやすいことが明らかになった。また、実験区画内の全遡上経路の選好性による評価値の平均値は、30分間遡上率の大小を説明できた。複数の遡上経路を持つ魚道の遡上効率向上のためには、選好性による評価値の高い遡上経路を確保するだけでなく、評価値の低い遡上経路を排除することが必要であると考えられる。