抄録
本研究では,下水処理過程におけるペルフルオロカルボン酸類(PFCAs)の挙動をその前駆体を考慮して検討することを主目的とし,実処理場の調査結果を元に,1)各処理過程中のPFCAs存在状況の把握,2)包括的なPFCAs生成能の評価手法の検討,3)生成能を考慮した各処理過程中のPFCAsの存在量収支の検討を行った.その結果,1) PFOAやPFNAは処理過程を経て濃度が増加し, 返送汚泥とともに生物処理系を循環している傾向が示唆された.2) 塩基性条件下でペルオキソ二硫酸カリウムによる酸化分解を行うことで,返送汚泥中では317ng/LのPFOA生成能(初期濃度の4.5倍)と929ng/LのPFNA生成能(初期濃度の5.0倍)を検出した.3) 生物処理および最終沈殿処理では収支が合わなかったΣ6種PFCAsの存在量が,生成能を考慮することで収支がほぼ一致した.