抄録
従来型の河川計画では,洪水外力として設定する基本高水位や計画洪水位は,決定論的にただひとつの値が決められ,それに基づいて計画が立案される.一方で,我々が認識しうる水文諸量には観測精度や観測誤差,人の認識限界といった不確実な要素が内包し,確率論的な要素を含む.また,洪水防御施設の一つである堤防も空間的に土質材料は不確実性を持つ.本研究では,外力(水位)の不確実性は確率過程論に基づいて降雨の不確実性から算出し,耐力(堤防)の不確実性は粘着力と内部摩擦角の不均一性を確率分布として考慮することで,堤防の信頼性評価を行った.この結果は,河川計画に対して確率過程論的な考え方の導入可能性を示し,他のリスクとの相互比較を可能とする理論的枠組を示したものである.