2015 年 71 巻 7 号 p. III_329-III_338
流入下水中の病原ウイルスの塩基配列解析は感染症流行状況の把握に有用であるとされている.しかし,既往の手法はごく限られた遺伝子領域にしか適用できないため,得た結果を用いてウイルス学的な解析を行うのは困難である.本研究ではそのような未知のウイルスの塩基配列をメタゲノム解析により効率的に解明するための手法として,ハイブリダイゼーション技術を用いて解析対象であるウイルスゲノムのみを回収する手法の開発を行った.その結果,最適な回収手法の確立に成功し,この手法を用いることで下水試料から回収対象であるウイルスゲノム(エンテロウイルス:71%)を,非回収対象のウイルスゲノム(マウスノロウイルス:0.18%,トウガラシ微斑ウイルス:0.19%)と比較し非常に高い回収率で回収することに成功した.