和文論文
現場飼育実験によるヤマトシジミの成長と食物環境の関係の解明
2016 年 72 巻 4 号 p. 61-69
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2016 年 72 巻 4 号 p. 61-69
ヤマトシジミの成長と食物環境との関係を明らかにするため，同一河川内に3定点を設けて現場飼育実験を行った．同時に生息場所に供給される懸濁態粒状有機物（POM）の捕集・測定を試みた．ヤマトシジミの成長は生息場所により異なったが，POMの供給量と成長速度の間には明瞭な関係はみられなかった．下流側河口域の定点でPOM供給量が最大であったが，成長速度は最も低かった．最も成長が良かったのは，3定点の中間であり，漁業の中心域のSt.2で，堆積有機物（SOM）中の陸上植物由来有機物の寄与が高い場所であった．ヤマトシジミの成長にとって，陸上植物由来有機物は炭素源として非常に重要な意味を持つことが示された．また，ヤマトシジミの食物環境の指標として，SOMの量と陸上植物由来有機物含有量の考慮の必要性が示唆された．
