2016 年 72 巻 5 号 p. I_321-I_328
平成27年の黒部川の出し平ダム・宇奈月ダムによる連携排砂において,河口地点でADCPを用いた流量観測を実施した.その結果,約13km上流の愛本観測所に比べて流量波形が約1時間遅れることや,複列河道における流路毎に流量の相違することを把握した.
流量観測にあたっては,高流速用ボートの採用,往復観測の実施,水深に応じた計測対象流路の選別,他観測手法との組み合わせによる効率化,濁度による減衰状況の把握などを実施した.電波流速計で計測した表面流速とADCPで実測した断面平均流速の関係性は既存の更正係数と同程度となり,地形と水深が既知であれば,表面流速の計測によって精度よく流量換算が可能であることを把握した.これらの知見を踏まえ,今後の複列河道における流量観測手法の省力化・省コスト化に向けた提案を行った.