土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
72 巻, 5 号
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地球環境研究論文集 第24巻
  • 木村 雄貴, 田上 雅浩, 今田 由紀子, 平林 由希子
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     地球温暖化が近年の異常気象や極端現象に与える影響を定量化することを目的に,大気大循環モデル(AGCM)を用いた過去の多数アンサンブル実験を行い,極端現象の発生確率を求めるEvent Attribution(EA)という解析手法が開発されてきた.しかし,既存のAGCMでは河川氾濫の再現性があまりよくないため,河川の洪水に対してEAが実施された例はこれまでに無い.そこで,本研究はEA実験を入力値とした河川氾濫モデルの多数アンサンブル実験を行い,2012年にアマゾン川上流で発生した洪水の要因分析を行った.その結果,人為的な地球温暖化が同洪水に35-48%寄与していること,アマゾン上流域で洪水が発生する際には,太平洋北部と大西洋北部における高気圧偏差の卓越と,太平洋や大西洋北部からの水蒸気の流入がカリブ海からアマゾン上流域にかけて収束する傾向にあることが判明した.
  • Donpapob MANEE, Yasuto TACHIKAWA, Yutaka ICHIKAWA, Kazuaki YOROZU
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     The objective of this study is to apply the differential split-sample test (DSST) to evaluate appropriate bias correction methods for future river discharge projection using the present climate GCMs data for dry and wet years and observed data for validation. A distributed flow routing model (1K-FRM) is used to obtain the dry and wet years in the present climate experiment by inputting the runoff generation data output from MRI-AGCM3.2S, a 20 km spatial resolution general circulation model (GCMs) developed by the Meteorological Research Institute, Japan. The Nan River Basin in Thailand is selected and several kinds of bias corrected inflow to Sirikit reservoir located at midstream of Nan River Basin are evaluated for a time period of 1979-2003. An effective bias correction method is proposed with suitable statistical performance considering a non-stationary condition for applying the bias correction methods to future discharge estimation.
  • Thi Hieu BUI, Hiroshi ISHIDAIRA, Parmeshwar UDMALE
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_13-I_20
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     Lack of meteorological data challenges applications of the hydrological modeling. Hence, in the ungauged or poorly gauged catchments, where data are not available or too sparse, other alternative data sources can be adopted. This study investigates the most appropriate type of precipitation data among rain gauge, satellite-gauge merging precipitation data using local rain gauge data and satellite precipitation product to predict streamflow in data sparse catchments. First, we analyzed the impact of blended rain gauge density on the performance of the satellite-gauge merging precipitation and modeled streamflow. Secondly, by considering the effect of rain gauge density, the streamflow simulation abilities of these three precipitation data sources were compared using the relationship between the model performance indices with the Areal Mean Precipitation uncertainties. It is found that the applicability of rain gauge data in the medium sized catchments was superior compared to the other two precipitation data. However, in the large river basin (Da river basin), satellite-gauge merging precipitation showed constantly superior streamflow simulation skills than the corresponding gauge only data.
  • 田内 裕人, 河村 明, 天口 英雄, OLSSON Jonas
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_21-I_26
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,都市構造を精度よく表現可能なポリゴン型不浸透域データであるUrban Atlasを活用し,広域水文・水質統合解析モデルであるHYPEモデルに都市部の不浸透域の流出特性を設定したU-HYPEモデルを提案するとともに,本モデルを流域面積と土地利用が異なる2つの流域に適用し,流出予測精度についての比較と検討を行った.その結果,U-HYPEモデルを活用することによって,従来の大陸スケールを対象とした流出解析モデルでは表現が困難であった降雨時のピーク流量について,対象流域の流域面積によらずに表現することが可能であることを示した.また,降水強度と流出予測精度の関係について検討した結果,U-HYPEにおいて降水強度の大きなイベントで洪水到達時間を過小評価する傾向が示唆され,HYPEモデル改善に関する複数の重要な知見が得られた.
  • Bhesh Raj THAPA, Hiroshi ISHIDAIRA, Thi Hieu BUI, Narendra Man SHAKYA
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_27-I_33
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     In Kathmandu valley, KUKL (Kathmandu Upatyka Khanepani Limited) is supplying potable water from the mountainous region of the valley to meet the daily demand but could meet only the 19% and 31% of total demand on dry and wet season respectively. The rapidly increased population, urbanization along with degraded water quality resulted water insecurity in Kathmandu Valley. Which motivated to access the potentiality of additional water harvesting from natural conservation zone for potable water supply. However, lacking of hydro meteorological gauges is challenging for water resources assessment and management from mountain in Kathmandu. Therefore, satellite-gauge merging precipitation data called bias reduction PERSIANN-CCS (BR-PER) was applied for stream-flow simulation for estimating the freshwater available on mountainous region to identify the possibility of water resources project development because BR-PER exploits the ability to capture the rainfall spatial variation from very high resolution satellite data PERSIANN-CCS and shows comparable rainfall magnitude estimations at the station scale. The model based simulation indicates the possibility to harness additional 67 MLD (million liters-a-day) and 87 MLD which is 18 % and 23 % of total current water demand can serve the additional 0.49 and 0.65 million of people in Kathmandu Valley during dry and wet season respectively. This statistics shows that if this additional available water will harnesses then it will reduced the ground water extraction rate and stress on groundwater resources. These could be short term solution to reduce the water insecurity in Kathmandu valley utilizing fresh water in sustainable way.
  • 藤村 和正, 井芹 慶彦, 岡田 将治, 鼎 信次郎, 村上 雅博
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_35-I_43
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     流出の将来予測を的確に行うためには,再現性が良好な流出モデルを必要とする.しかし,モデルパラメータに含まれる不確実性は解析精度に影響を及ぼす.信頼できる予測結果を得るためには,適切なパラメータを採用することが重要である.そこで本研究では,多くの流出モデルの基礎式になっている貯留関数式を取り上げ,パラメータ特性を把握し,流出解析の精度を向上させることを目的とする.解析方法は,四国の早明浦ダム流域を対象とし,1991年から2010年までの20年間のデータから単峰性で規模の大きい14洪水を選択し,流出モデルをDiskin-Nazimovの雨水浸透モデルと貯留関数式から構成し,貯留関数式の2つのパラメータ,指数pと係数kを変動させて流出解析を繰り返す.そして,Nash係数による誤差評価からパラメータの特性を表し,その適用について検討する.解析の結果,洪水毎に異なるパラメータの最適値をp-k関係として指数関数式により近似して表現できる可能性を示した.そして,この指数関数式を利用することにより,対象洪水に対して概ね良好な再現結果が得られることを表した.
  • 舩木 翔太, 朝岡 良浩, 木内 豪
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_45-I_51
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     氷河の融解水を水資源として利用するボリビア多民族国は,氷河縮小によって水資源管理の見直しに迫られている.本研究はボリビア国のトゥニ貯水池を対象として,氷河融解・流出モデルを適用して,氷河縮小が流出量に及ぼす影響を解析した.氷河域はLandsat衛星の画像を用いて1987年から2014年の変化を抽出した.その結果,トゥニ貯水池集水域の氷河面積は対象期間に8.7km2から4.9km2に減少,氷河面積の変化に対して年間流出量は約40%減少する.流出量に対する氷河融解水の寄与率は雨季の前半(9月から12月)に集中する.氷河面積の減少によって寄与率は42%から4.5%に減少する.氷河融解による流出量は氷河面積と線形関係にあり,特に消耗域の変動が影響を及ぼすと考察した.
  • 多田 毅, 宮田 喜壽, 弘中 淳市, 近藤 誠二
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_53-I_58
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     高強度ジオグリッドをマットレス状に組立て,中に中詰石を充填して設置する長尺マットレス工は,河川堤防や砂浜海岸の侵食防止,河床や橋脚の洗掘防止,消波ブロックや仮設道路の基礎などに適用されている.この長尺マットレス工は,生物の生息域の創出,覆土による植生の復元,有害成分が溶出しないといった性質を持ち,CO2排出量の削減も期待される.本研究ではこのジオグリッド長尺マットレスを海岸の侵食対策や港湾構造物の保護工などに適用するために,被覆石や被覆ブロックの安定性の検討に用いられる安定数(KD値)を水路模型実験により確認した.
  • 渡辺 一也, 高橋 侑矢, 森澤 海里
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_59-I_64
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     海洋の流動を知る上で海上風は流れの情報と共に,重要な物理量の一つである.流れや海上風については従来はADCPや船舶やブイ,観測塔を使用しての観測がなされてきた.近年では衛星を利用した海上風推定が可能となり,今まではデータを得ることが困難であった海域においても空間的な観測がなされるようになった.しかし,衛星を利用した海上風推定では空間・時間分解能が低く,構造物のある海域や沿岸域での推定は困難である場合が多い.
     そこで本研究では,時間分解能の高い波高・周期データの観測が可能な海洋短波レーダを使用した海上風の推定を行うための手法について検討を行った.さらに従来行われていたTobaの3/2乗則の係数の決定方法についても新しい係数の決定法について検討した.その結果,7地点で推定値と実測値の一致が見られた.
  • 叢 日超, 松本 亨, 徐 鶴, 李 文超
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_65-I_72
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     近年,天津市に中国北方地域最大の循環産業基地である「子牙経済産業区」が建設されている.一方,天津市の家庭系廃プラスチックのリサイクルシステムの実情を見ると,経済効率性,環境性,労働衛生性のいずれの観点からも良い状況とはいえない.本研究では,天津市の家庭系廃プラスチックを評価対象に,無認可のリサイクル体制を現状ケース,子牙循環経済産業区での近代的な廃プラリサイクルを改善ケースと想定し,改善による環境負荷削減効果を試算した.特に,輸送過程を焦点を当て,Grid City Model(GCM)をベースとした最適化計算により中継場数を算出し,その後GISを用いて,現状の収集体制に対する改善ケースのより詳細な計算を行うことで,CO2排出量の推計を行った.
  • 奥山 忠裕
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_73-I_84
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,軽微な汚染状態でも便益計測を可能とする顕示選好データによる大気質の便益計測である.健康水準と関連した大気質のデータを調査し,マスク需要関数を推計,利用可能性について検証した.推計モデルとして,ポアソン回帰(PSR),一般化端点解モデル(GCS),家計内生産関数モデルである(HPF)を用いた.便益計測の結果,PSRを用いた場合,約1円~約681円/年,GCSで約6円/年~約4,226円/年,HPFで約0円/年~約9円/年となった.また,健康水準を考慮した場合,HPFでは8円/年~28円/年,GCSでは335円/年~3,648円/年として計測された.結果として,PSRおよびGCSは利用可能であるものの,HPFは従属変数の選択に課題がある点が指摘された.
  • 矢守 裕貴, 村上 一真
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_85-I_91
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     感謝の意を表したポジティブメッセージ「感謝」に,違反駐輪をどの程度抑止させる効果があるかを検証した.大学生に対するアンケート調査により「意識レベル」での効果検証を行った後,大学構内での社会実験によって,「行動レベル」でのその効果の立証を試みた.その結果,意識レベルにおいて,ポジティブメッセージの中では「感謝」が最も効果が大きく,その「感謝」の効果は,一般的に多く用いられているネガティブメッセージ「禁止」に勝ることが明らかになった.さらに社会実験の結果から,行動レベルでも,ポジティブメッセージ「感謝」が,ネガティブメッセージ「禁止」よりも効果が大きいことが示された.
  • 豊田 康嗣, 新井 涼允, 梶谷 義雄, 佐藤 隆宏, 石井 孝
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_93-I_100
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     水力発電は他の再生可能エネルギーと比較しても安定した電力供給を見込むことができるが,観測流量の不備と事業採算性評価の困難さから,新規水力開発には未だに高いハードルがある.本研究では,流出解析モデルを用いて,小水力発電の事業採算性評価手法を構築した.事業採算性評価は,発電単価評価と採算性評価から構成される.発電単価評価では最安の発電単価となる水圧管路管径と設計取水量の関係を決定するために,単価最安計算が実施される.採算性評価では,固定価格買取制度を適用したときの売電収入と運用コストの収支から,建設工事費回収年が推定される.本研究では,ケーススタディー地点において事業採算性評価手法を適用し,FIT終了後の買取価格や金利などの影響について論じた.
  • 井上 雄太, 関根 大樹, 三尾 有年, 桑原 祐史
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_101-I_108
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     合成開口レーダ(SAR)は,観測時において天候による影響が小さいため,概ね悪天候時に多い自然災害時の状況把握に有用である.このような中,SARデータの選定は,主に基線長や大気中の水蒸気を考慮してユーザ自身が決定する必要がある.しかし,マイクロ波照射方向と地形条件によっては,波が遮蔽される領域が存在するため,解析精度が低下する場合もある.そこで,既存のDEMを用いて軌道方向と地形起伏の関係を示す情報を生成することで,対象領域の解析時により条件の良いデータ選定ができるように,データ選定を支援する画像(以下,SARデータ選定支援情報)の提案を目的とした.結論として,公称標高値が再現できる領域とそうでない領域を既存のDEMで図示する方法を考案し,生成した図を基にデータ購入時にユーザが参考とする選定支援情報を提案した.
  • 臼井 聖奈, 佐藤 真行, 大西 暁生
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_109-I_117
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     日本では高度経済成長期において都市の開発が進むことによって都市環境問題の一つであるヒートアイランド現象が悪化していった.そして,この現象を緩和させるため,都市内において緑化が推奨された.しかし,近年,屋上と壁面の緑化の施工面積は減少傾向ないしは横ばいに転じている.本研究では,戸建住宅において緑化を促進することを目的に,愛知県名古屋市においてWEBアンケート調査を実施し,人々が緑化を施工する場合の条件(施工場所や樹種など)を把握するとともに,施工する場合の助成金額と支払い負担額のバランスを把握した.そして,現在実施されている緑化助成が本当に妥当なものかどうかを評価・検討した.
  • 広城 吉成, 森田 祐輝, 右田 義臣, 天日 美薫, 田籠 久也
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_119-I_126
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     土木造成工事において,地盤の安定のために未利用資源を使用することがある.九州大学の新キャンパス建設の土地開発地域では,豪雨の影響で斜面の土砂が流出することを防ぐために,竹チップを散布した.しかし,雨が降ったときに竹チップを散布した場所付近の観測井で,茶色に着色した水が流れていることを確認した.そのため,着色の原因の可能性がある竹チップによる地下水の水質に影響を明らかにすることが重要かつ緊急に必要となった.本研究では,観測井における地下水水質の分析を行い,竹チップによって影響を受けた地下水水質の変化を室内実験によって確認した.実験の結果より,着色の原因は竹チップ散布による可能性が高いため,土地開発の表面で竹チップを散布するとき,その地域で地下水水質への影響を注意深く考慮することが必要である.
  • 天野 弘基, 中川 啓, 河村 明
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_127-I_135
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     島原市の地下水水質を対象として,4種類の多変量解析手法を適用し,どの分類結果が当該地域の水質特性を説明するために適しているかについて検討した.5つのクラスターに分類した場合のそれぞれ特徴は,ほぼ同様であったが,各クラスターの空間分布については手法間に違いが認められ,主成分分析を利用した手法は,硝酸性窒素濃度が比較的高い採水地点を,汚染クラスターに分類した.クラスター数を10とした場合においても主成分分析を利用した手法がより適切な結果を与えうることが明らかとなった.
  • Nuong Thi BUI, Akira KAWAMURA, Hideo AMAGUCHI, Duong Du BUI, Ngoc Tu T ...
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_137-I_146
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     In order to assess the sustainability for groundwater resources, this study applies Analytical Hierarchy Process (AHP) approach to establish an environmental sustainability assessment (ESA) framework. The study modifies the standard AHP to make it simple in the way of weighting the component contribution properly and applies for Hanoi as the first tropical monsoonal case study. Groundwater abstraction, pollution and environment situations are selected as the three main aspects. The ten core indicators are adopted from the groundwater sustainability indicators, suggested by the UNESCO/IAEA/IAH Working Group, to indicate that the bigger values of the indicators provide the better contribution into sustainability from environmental point of view. As the result, the composite sustainability index, S, is assessed at a good level, resulting from the contributions of the acceptable abstraction, good pollution and excellent environment situations. The sustainability indices are evaluated at the moderately high values, improbably reflecting the current problems. The study explores reasons for this gap and finds out suitable solutions to enhance ESA's performance. In order to improve the sensitivity of ESA, it is necessary to not only improve the indicator definition, validate the data used, but also carry out in smaller scales, to have a better view of resources.
  • 石原 成幸, 河村 明, 天口 英雄, 高崎 忠勝, 久保 英二朗
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_147-I_154
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本論文では東京都の多摩地域に位置する28自治体において,2005年から2014年の10箇年の月別地下水揚水量に自己組織化マップ(SOM)を適用して揚水量パターンの変動解析を行った.SOM解析の結果,10箇年の揚水量パターンの変動は6クラスターに分類され,さらに4グループに大別できることを示した.これは,揚水量の少ないパターンがグループA1及びA2に分類でき,地下水揚水量が多い主な変動パターンの大部分はグループB1とB2に分類された.さらに,グループB1とB2の大部分は,10箇年の後半に水道水源用途の減少等に起因して,グループA1及びA2に変動パターンが変化することが判った.また一部では,環境用途(池への補水)等の揚水増加に伴い,グループB1を維持することが確認できた.これらの結果から,SOM解析が地下水揚水量パターンの変動解析に有効な手法であることを明らかにした.
  • 鈴木 絢美, 藪崎 志穂, 川越 清樹
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_155-I_164
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     阿賀野川を対象に流域内の地域的な積雪環境構成と特徴を把握する解析を試みた.流域内でサンプリングされた積雪試料の安定同位体比と経年の積雪深を分析することで流域内の積雪環境を明らかにした.解析より以下の流域内の地域特徴の結果を得た.①経年との比較より,近年,阿賀野川流域では積雪の地域差異が広がった.②流域内に日本海起源の積雪が広く分布する傾向を示すが,流域東部では,日本海起源とは異なる可能性を持つ積雪も認められた.③日本海起源と異なる積雪環境は多雪,少雪に関係なく認められる.④積雪環境の境界は年単位で変化した.⑤裏磐梯地域では2014年に短期の気温上昇に関連した特異な積雪も認められた.今後,これら空間特徴も加味した気候変動の基礎データへの活用が期待される.
  • 福島 慶太郎, 富田 遼平, 横山 勝英
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_165-I_172
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     気仙沼湾に流入する4河川を対象に,溶存態有機物(DOM)の濃度および質と土地利用との関係を調べた.また,2011年3月の震災後に河口域に創出された湿地がDOMに与える影響を検討した.河川上流から下流までと,主な支流から採水し,溶存有機態炭素(DOC)濃度と,腐植物質の指標とされる紫外線吸光度,3次元励起蛍光特性から識別されるフルボ酸様およびタンパク様物質の相対蛍光強度を測定した.その結果,腐植物質由来のDOMは広葉樹林と耕作地が,タンパク様DOMは耕作地が負荷源として重要であり,その負荷は降雨時に増大することが明らかとなった.また,市街地はDOM中のタンパク様物質の割合が上昇する要因であった.震災後に創出した湿地では腐植様・タンパク様DOMの溶出が示唆され,震災によって沿岸域に輸送されるDOC濃度およびDOMの質が変化したと考えられた.
  • 朝原 大貴, 江口 三希子, 佐藤 大作, 藤田 昌史, 横木 裕宗
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_173-I_178
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     フナフチ環礁のような環礁のラグーンは,その地形的特徴から日本の代表的な閉鎖性内湾と比較しても,同程度の閉鎖性を持っていることが想像される.そのため,州島陸域から流出した汚濁物質はラグーン内に滞留することが予想されるが,詳細は不明である.そこで本研究では,フナフチ環礁における代表的な風場条件から,ラグーン内に流出した汚濁物質の移流拡散プロセスを明らかにし,水質汚染対策に有用な知見を得るために数値計算を実施した.その結果,汚濁物質は南東風の条件を除いて,ラグーン内に滞留することがわかった.排水ポンプを用いた汚濁改善対策に関して数値的検討を行った結果,排出源周辺海域においてリーフフラットからの流入量の約1%未満という非常に少ない流量で汚濁物質を14%除去することが可能であることがわかった.また,排水ポンプの稼働を季節や風向によって制御し,現地観測等で得た汚濁物質流出源の詳細な時空間分布を考慮することで,効率よく除去を行うことが出来ると考えられた.
  • 橋本 和磨, 福島 慶太郎, 横山 勝英
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_179-I_186
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     東日本大震災により創出された湿地の管理方針を検討するため,湿地の形成過程と現在の環境を把握する必要がある.本研究では,気仙沼舞根地区の空中写真から湿地周辺の70年間の変遷を整理し,現地測量と公開データから湿地底面標高の変化を求めた.
     震災湿地は,過去に自然湿地を埋め立てて宅地や耕作地として利用していた場所が,地盤沈下によって海水が浸入し,形成されたことが分かった.震災後,2012~2015年までに湿地底面標高が約180 mm上昇し,その約72 %が地盤隆起,残りが土砂堆積に起因すると推定された.このままの速度で推移すると,湿地は2034年頃に消滅する可能性が示された.湿地水は舞根湾の潮汐の影響を受け,海水と同等の塩分を有するが,日雨量150 mmを超える降水時には,増水した西舞根川の影響で塩分が7倍以上に希釈される特異な環境下にあることが分かった.
  • 紀伊 雅敦, 中村 一樹, 森田 紘圭
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_187-I_194
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     都市の拡大は気候変動や生物多様性等の環境問題に多大な影響をもたらすと考えられている.本研究では筆者らが開発した都市空間モデルを用い,SRESおよびSSPsシナリオの下での世界3600都市の2100年までの都市化を展望する.その際,特に住宅の生産性と交通コスト変化が都市化に与える影響について感度分析を行う.分析の結果,世界全体の都市面積は2100年には2000年比の3~6倍,中央値は4.4倍と推計されたが,その傾向は地域により大きく異なることが示された.また,シナリオ毎の違いから特に経済成長が都市拡大に大きく影響することを示すとともに,持続発展シナリオの推計結果はストーリーラインと整合せず,政策介入等がシナリオ実現に必要なことを示唆した.また,感度分析により住宅生産性の向上は都市拡大を抑制し,交通コストの低下は都市拡大を促進することを示した.
  • 森田 紘圭, 川原 志郎, 大西 暁生
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_195-I_204
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     気候変動への危機認識は国際的に高まっており,社会全体から市民一人ひとりの暮らしに至るまで,より一層の低炭素化に対する取り組みが求められつつある.しかし,市民一人ひとりの低炭素ライフスタイルへの転換は充分に進んでいない.本研究では,気候変動による将来の生活環境の変化と現在の生活行動に対する価値観を,生活者のライフスタイルの多様化を踏まえ,分析した.具体的には,川崎市民へのSPアンケート調査を実施し,コンジョイント分析により各影響項目に対する価値観と支払意志額を算出した.その結果,1)本研究で設定した水準値では,生活環境変化の中でも特に生活コストや健康,停電などへの影響に対する重要性が高いこと,2)高齢者は将来の生活環境よりも現在の生活行動を重視すること,3)文化系や社会系の趣味を持つ生活者のほうが将来における生活環境を重要視すること,などが明らかになった.
  • 谷口 陽子, 中津川 誠, 工藤 啓介
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_205-I_211
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,積雪寒冷地の地域特性を踏まえた地球温暖化に対する適応策を考えていくための基礎研究として,北海道のダム流域を対象に,IPCC第5次評価報告書に対応した気候変動予測データを用いて地域レベルでの地球温暖化の影響を,水資源やウィンタースポーツに関連する積雪量・雪質の観点から定量的に評価したものである.
     積雪量に関してはLoHASにより年最大積雪包蔵水量が将来気候において現在気候の約8割まで減少することが明らかとなった.積雪寒冷地のダムでは雪水資源を利用した夏場の利水補給を行っており,融雪期のダム貯水池運用に大きな影響が及ぶものと考えられる.また,雪質に関してはSNOWPACKにより将来気候では,積雪全体がざらめ雪になるのが早期化することが分かり,豊富な積雪量と良好な雪質をもつスキー場の環境が劣化する場合があることが示唆された.
  • 井芹 慶彦, 宮崎 千尋, Lu GAO, 吉川 沙耶花, 鼎 信次郎
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_213-I_221
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,最新の気候シナリオと社会経済シナリオの組み合わせが統合評価モデル影響関数による推計に与える影響を定量的に分析するため,統合評価モデルFUNDに着目し,最新のシナリオフレームワークを用いてFUNDの水分野影響関数による経済影響推計を行った.その結果,本研究で着目した三分野のうちどれも,高排出シナリオ(RCP8.5)では21世紀末にかけて被害が増加し続けていた.21世紀末における三つの社会経済シナリオ(SSPs)間での被害の大きさを全球GDP比で比較すると,水資源及び熱帯低気圧影響は,適応への困難度が大きいSSP3で被害が最も大きく,SSP1とSSP2の被害は同程度であった.一方,海面上昇については,SSP3 > SSP1 > SSP2となっており,排出シナリオ・社会経済シナリオの違いが被害の大きさに与える影響を定量的に示す事ができた.
  • 藤森 真一郎, 長谷川 知子, 高橋 潔, 増井 利彦, 滝見 真穂
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_223-I_231
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     世界各国はCOP21に先立って2030年までの短中期的な温室効果ガス(GHG)排出量目標を約束草案という形で宣言した.また同時に,全球平均気温上昇を2℃以下に抑えるという長期的な気候安定化目標が明記された.本研究は統合評価モデルAIM(Asia-Pacific Integrated Model)を用いてこの短中期的排出目標が長期的な気候緩和策に及ぼす影響とその含意を示した.各国が自国決定貢献(NDC)を達成したとしても,世界全体のGHG排出量は費用最小排出経路と比べて2030年において15GtCO2eq/年大きかった.この余分に排出したGHGを2030年以降で追加的に削減をすることで,平均気温上昇を2℃以下に抑えるという長期気候安定化目標は達成可能であった.しかし,2050年までは急速な排出削減が必要となり,エネルギーシステムや社会経済システムの急激な変革が求められ,2050年以降では負のCO2排出量を実現するバイオマスと炭素隔離貯蔵を組み合わせた対策と植林といった土地利用をベースとした対策の大規模導入が必要となる.2020年に行われる各国のNDCの見直しでは,こういったことを踏まえ排出目標を検討することが求められる.
  • 北野 慈和, 山田 朋人
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_233-I_239
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     日本周辺を通過する爆弾低気圧の中心気圧とその停滞性について,ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)の40年再解析データ(ERA-40)及び第3期結合モデル相互比較計画(CMIP3)の代表的な3モデルを用いて解析を行った.将来気候(A1Bシナリオ)として現在気候に比べ2℃全球の平均気温が上昇する年代を用いた.日本付近において,中心気圧が960hPa以下となり,かつその際の中心気圧の位置の移動速度が30km/h以下になる爆弾低気圧は,再解析,現在気候,将来気候共に,北海道北東部のオホーツク海付近に位置することが分かった.このように停滞しかつ強力な爆弾低気圧が存在する場合,その東側にブロッキング高気圧を伴うことが多い.
  • 木口 雅司, 井芹 慶彦, 鼎 信次郎, 沖 大幹
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_241-I_246
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では、地球温暖化に伴う気候変動が進行して、ある臨界点(ティッピングポイント)を過ぎた時点で不連続のような急激な変化が生じて、大きなインパクトをもたらすような気候変動の要素(ティッピングエレメント)の発現可能性について解析した。先行研究で述べられたティッピングポイントを用いて、4つの排出シナリオや緩和目標としての戦略シナリオと、ティッピングエレメントのうち北極海の夏の海氷の喪失とグリーンランド氷床の融解について関連性を導いた。その結果、ティッピングポイントの不確実性があるものの、各排出シナリオでのティッピングエレメントの発現可能性が示された。一方戦略シナリオでは、複数気候シナリオを用いて検討した結果、気候シナリオとティッピングエレメントの両方の不確実性を組み合わせて議論する可能性が示された。
  • Vladimir MOYA QUIROGA, Shuichi KURE, Keiko UDO, Akira MANO
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_247-I_252
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     The Mamore river is the most important Bolivian river and one of the most important tributaries of the Amazon river. Engineers design flood control structures and water use plans considering hydrologic design discharges. Climate change will change the hydrological conditions. Thus, current hydrologic design discharges may not be valid for future conditions. Unfortunately, there are no studies about future streamflow conditions and future design discharges; hence, there is uncertainty about the future performance of flood control structures and water use plans.
     The present study analyzes the changes in the hydrological design discharges of the Mamore river due to climate change. The semidistributed hydrological model Supertank was used to simulate the streamflow of the Mamore considering current and future climatological conditions. Future conditions were simulated using downscaled projections of the WRF model based on projections from different general circulation models. Results show that future peak design discharges will increase between 11% and 16%. Future low flows show higher uncertainty. According to some projections future low flow will decrease 25%, while according to other projections future low flows will increase 30%.
  • 阪田 義隆, 上原 弘之, 知北 和久, 中津川 誠, 山田 朋人, 工藤 啓介, 臼谷 友秀
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_253-I_264
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,多様な流域からなる北海道の渇水比流量を説明する領域モデルを構築し,現在および将来の渇水比流量分布を推定する.代表115流域の渇水比流量を再現する線形回帰モデルを,降水量,気温,地形,地質,植生,土壌,土地利用の44説明因子を用いた部分最小二乗法により決定する.その際,冬の降水中の雪・雨割合は月平均気温による指数近似式を用いて推定する.その結果,冬の降雨量と降雪量,秋の降水量,冬と夏の平均気温,標高の標準偏差と平均勾配および,集水域中の火山噴出物,第四紀火山岩,森林,湿原の面積割合の11因子からなるモデルを推定誤差と因子数の点から最良と判断する.領域モデルを北海道全1122流域に適用し,非観測流域を含む渇水比流量の現在分布を推定するとともに,気候変動シミュレーション結果と併せて将来分布を予測する
  • 塩尻 大也, 田中 賢治, 田中 茂信, 浜口 俊雄
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_265-I_270
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     近年,急激な人口増加や経済発展に伴い,水需要が急激に増加している.それにより今後世界で水不足が深刻化することが予測されている.そこで本研究では,全球規模での水逼迫度の評価と地下水位変動の推定を行った.使用した水文モデルは陸面過程および河道流下過程より構成されている.解析は20kmの解像度で行い,メッシュ毎に水需要量と河川流量を需要量が上回る量を求めることで,水の逼迫度合いを計算した.さらに基底流出量の一部を地下水涵養量として考えることで,地下水からの取水が過剰であり,持続不可能な地下水使用を行っている地域の可視化も行った.
  • 沖 岳大, 中津川 誠
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_271-I_276
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     近年,日本各地で極端な豪雨が発生し,土砂災害や堤防決壊などの災害が頻発している.本研究では,北海道最大の経済拠点である札幌及びその周辺市町,交通の要衝である新千歳空港を抱える石狩川水系千歳川流域を対象に,①流域を貯留関数法,②河道を一次元不定流,③氾濫原を平面二次元不定流,で氾濫解析モデルを構築し,最大規模の降雨を想定した浸水予測について研究を行った.なお研究に用いた解析モデルは,千歳川が石狩川の背水影響を30km以上にわたり受ける低平地河川であり,支川・運河・排水路まで背水影響が及ぶことを勘案し,内水・外水を一体化した氾濫解析モデルを構築した.解析モデルの検証には,石狩川水系における観測史上最大の洪水である昭和56年洪水と,平成以降の大規模出水である平成13年洪水を再現した.
  • 米勢 嘉智, 河村 明, 天口 英雄, 戸野塚 章宏
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_277-I_282
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本論文では,XバンドMPレーダ雨量について,神田川上流域の池袋橋観測所の1分値地上雨量観測データを用いて時空間特性解析を実施した.観測所直上メッシュにおけるXバンドMPレーダ雨量と地上雨量との相関係数の比較より,XバンドMPレーダ雨量は地上雨量に対して,遅れ時間を数分程度見込むことで相関係数が高くなることを示した.また,地上雨量と観測所周辺メッシュ範囲におけるXバンドMPレーダ雨量を用いた時空間解析により,特に集中豪雨のような強雨域を有する場合は,必ずしも観測所直上メッシュでなく周辺メッシュ範囲におけるXバンドMPレーダ雨量と地上雨量の相関性が高いことを明らかにした.
  • Idham Riyando MOE, Shuichi KURE, Nurul Fajar JANURIYADI, Mohammad FARI ...
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_283-I_289
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     Floods are considered to be one of the major natural disasters in Indonesia. Jakarta in Indonesia has experienced many floods in the past, such as those in 1996, 2002, 2007 and 2013. In this paper, land subsidence problems contributing to flooding in Jakarta were described and historical and future land subsidence situations in Jakarta were reconstructed and projected using a simple linear extrapolation method. Also, those land subsidence impacts were analyzed by using a flood inundation model. As a result of analysis, it was found that the land subsidence in Jakarta contributed by 17.6% to increase of the total flood inundation volume from 1983 to 2013. Also, it was estimated that the land subsidence situations for the future period of 2050 would increase the flood inundation volume by 10.3% compared to those of 2013. However, impacts from land use/cover changes on the flood inundation were found to be much greater than those from land subsidence in Jakarta. It should be noted that the land subsidence affects flooding from the coast when high waves and surges occur but those effects were not considered in this paper.
  • 諸岡 良優, 永田 喜大, 山田 正
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_291-I_296
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     近年,ゲリラ豪雨のように短時間で局所的な大雨や,大型の台風のように比較的長い時間に渡って広範囲にもたらされる大雨により大規模な水害発生のリスクが高まっており,日本全国で毎年のように洪水による浸水被害や土砂災害等の水害が発生している.本研究では,平成27年9月関東・東北豪雨を対象に,河川計画の観点から鬼怒川上流域の降雨の時空間分布特性について分析し,地上雨量観測所数と流域平均雨量の推定精度を評価する.既往の方法によって地上雨量計による点雨量から算出した流域平均雨量を用いて確率降雨量を求めることにより,地上雨量観測所数と確率降雨量の関係について分析を行った.
  • 高崎 忠勝, 河村 明, 天口 英雄, 石原 成幸
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_297-I_303
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本論文は,都市域における中小河川の親水利用に向けて,急な大雨に対する河川増水初期の流出特性を検討したものである.大都市で普及している合流式下水道の流出特性を適切に表現するため,都市貯留関数モデルを用い,東京都区部に位置する中小河川善福寺川を対象に,10洪水のデータをもとに降雨流出特性を解析し,増水初期において退避行動が可能な時間を検討した.また,今後予定されている下水道施設の整備により初期雨水が貯留された場合についても同様の検討を行い,流出特性の変化が親水利用に及ぼす影響について考察した.
  • 萬矢 敦啓, 墳原 学, 工藤 俊, 小関 博司, 笛田 俊治
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_305-I_311
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     著者らは河床変動・流路変動が活発な河道における流量観測システムを構築することを目的としている.この観測システムとは無人観測であること,洪水時の河床変化を考慮すること,データ欠測が少ない安定した計測が可能であることである.本稿で概説する電波式流速水位計はこのシステムの中心技術であり,既往の電波式流速計と比較すると計測範囲が広いこと,流速と水位の同時計測が可能になったことが特徴的である.ここでは計測原理の概要,比較観測,試験観測の結果を述べる.比較観測では流速に関して直線距離が300m程度の地点をターゲットとした場合±15cm/s程度,水位に関しては直線距離が50m程度の地点で±10cm程度の正確度を持つ観測結果となった.また姫川山本観測地点における無人・遠隔観測を実施し,適切な水位観測を実施したことを確認することができた.
  • 工藤 俊, 萬矢 敦啓, 小関 博司, 笛田 俊治, 中津川 誠
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_313-I_320
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     本研究は急流河川で土砂移動が活発な姫川を対象とし,洪水中の流水抵抗変化を予測して河床高を推定し,それを用いて流量を推定する手法を検討する.姫川の基準点では過去に,観測水位から変換する流量と水文モデルで計算する流量が乖離する例がある.このうち,観測水位から流量に変換する上で誤差が生じる要因は洪水中の流水抵抗の変化や河床変動が挙げられ,土砂移動が活発な姫川ではこれらを考慮することが特に重要である.本研究では,ADCP等を用いた観測結果から洪水中の流水抵抗を分析した上で,表面流速や水位等の水表面から得られる情報から流水抵抗変化を予測しながら河床高及び流量を推定した.その結果,推定河床高からの流量はADCP観測の河床高からの流量を良好に再現し,横断観測結果から固定床を仮定し算出される流量よりも大きくなった.
  • 野間口 芳希, 中村 詩穂, 秋田 麗子, 手計 太一
    2016 年 72 巻 5 号 p. I_321-I_328
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/02/20
    ジャーナル フリー
     平成27年の黒部川の出し平ダム・宇奈月ダムによる連携排砂において,河口地点でADCPを用いた流量観測を実施した.その結果,約13km上流の愛本観測所に比べて流量波形が約1時間遅れることや,複列河道における流路毎に流量の相違することを把握した.
     流量観測にあたっては,高流速用ボートの採用,往復観測の実施,水深に応じた計測対象流路の選別,他観測手法との組み合わせによる効率化,濁度による減衰状況の把握などを実施した.電波流速計で計測した表面流速とADCPで実測した断面平均流速の関係性は既存の更正係数と同程度となり,地形と水深が既知であれば,表面流速の計測によって精度よく流量換算が可能であることを把握した.これらの知見を踏まえ,今後の複列河道における流量観測手法の省力化・省コスト化に向けた提案を行った.
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