土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
環境システム研究論文集 第44巻
将来シナリオ分析のための里山の景観の多様性のシミュレーションプロセスの開発―LANDIS-IIと改良さとやま指数を用いて―
芳賀 智宏松井 孝典町村 尚
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2016 年 72 巻 6 号 p. II_299-II_309

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抄録

 里山ランドスケープの持続可能な管理をするためには,里山の生物多様性や生態系サービスの量的な評価を行うことが求められている.この背景から里山での生物多様性をSatoyama Index (SI)やそれを改良した指標で定量的に評価し可視化する研究が進んでいるが,今後は将来シナリオ別に里山を含む空間の変化を定量的に評価できる手法に拡張していくことが求められている.本研究では,里山の構成要素のうち森林と耕作地を対象として里山管理のシナリオ分析を行うシミュレーションプロセスを開発することを目的とする.石川県をサンプルの対象地とし,石川県の主伐および間伐面積率と耕作放棄地率から作成した4つの里山管理シナリオで森林景観シミュレーションモデルLANDIS-IIを用いて1998年から2097年の植生の遷移を再現し,景観の多様性を改良さとやま指数(the modified Satoyama Index: M-SI)の推移で空間的に表現した.森林施業と耕作地の管理では特に耕作放棄の影響が大きく,耕作放棄が進展すると二次林の拡大によって均質な土地利用となりM-SI値が減少したが,耕作地を管理したシナリオでは景観の多様性が保たれるという結果が得られた.この結果から,社会シナリオをLANDIS-IIと連携させ,里山の状態量を動的かつ定量的に評価できるシミュレーションプロセスの開発について有用性と今後の開発課題を議論した.

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© 2016 公益社団法人 土木学会
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