抄録
人口増加や経済発展に伴い,海水淡水化施設の需要が世界中で増加している.将来の人口や水利用量の変化を勘案し,海水淡水化施設がもたらす効果を給水量と渇水被害軽減による社会便益の両面から明らかにしておくことが大切である.本研究は,福岡県海水淡水化施設(まみずピア)を対象に,同施設が福岡都市圏に与える渇水被害軽減の社会便益と,運用にかかる費用を定量的に推計して比較した.その結果,まみずピアの近年の一日平均給水量30,000 m3を想定した場合,50年間の純現在価値は487.3億円,費用便益比は1.66と推定された.また1978年の福岡大渇水時にまみずピアが存在していたことを想定した場合,渇水制限の最も厳しい時期においても,計画一日給水量に対して約8割の水資源を確保することができて,渇水被害額も同程度の割合で削減できることが明らかになった.