抄録
本研究の目的は,開発した全国地盤物性データベースからの有効熱伝導率の三次元情報と地中熱シミュレーションを組み合わせ,地中熱利用ヒートポンプ暖房システムを戸建て住宅に導入した場合の環境負荷低減効果を計算し,北日本全体の地中熱ポテンシャルマップとして示すことである.その際,期間平均成績係数(COP)を導入指標とし,目標COPを得るための地中熱交換器長さLbの決定法を提案する.その結果,標準的なLb= 100 mのシステムを戸建て住宅に導入する場合,COPは北海道で4.0程度,東北以南で4.4程度と計算された.より合理的な導入のため,目標COPを4.25に設定する場合,東北以南でLb= 80 m程度とより短く,北海道で130 m程度とより長く必要になると計算された.CO2排出量削減率は,45~60 %程度と電力使用時の排出係数に依存し,東北以南で高い導入効果が示された.