抄録
本研究では,化粧品中のポリフルオロアルキルリン酸エステル類(PAPs)の好気条件下における生分解生成物の挙動の検討を主目的とした.PAPsは難分解性や生殖毒性が疑われているペルフルオロカルボン酸類(PFCAs)の前駆体として注目されている.下水処理場の生物処理工程を模擬した生分解試験より,化粧品中のPAPsからの類縁化合物類を含めた生分解生成物の挙動を定量的に評価した.化粧品中の10種のdiPAPsの濃度減少を一次反応式で近似した場合,その半減期は6~111時間であり,分子量が大きくなるにつれて,半減期が長くなる傾向が示された.8:2diPAPからのペルフルオロオクタン酸(PFOA)のモル生成率は4.0±0.4%であった.中間生成体と予想されるフッ素テロマーアルコール類(FTOHs), フッ素テロマーカルボン酸類(FTCAs)が生分解生成物として検出された.さらに,低分子量のFTOHs(5:2sFTOH, 6:2FTOH, 7:2sFTOH)は,曝気により気相へ移行する可能性が示唆された.