2017 年 73 巻 7 号 p. III_157-III_164
本研究では,硝化細菌によって微量ながら生産される一酸化窒素(NO)の生理的機能に着目し,NOの強制通気が亜酸化窒素(N2O)生成に及ぼす影響を調べた.実験には無機基質で培養した硝化細菌を用い,回分運転サイクル中の曝気又は撹拌工程にNOを強制通気させた.曝気工程で曝露させた系では,N2O転換率の上昇が確認されたが,DOや亜硝酸の影響を取り除いたNOの直接的効果としては,N2O生成能を減少させている可能性が示唆された.一方,撹拌工程でNO曝露をさせた場合は,N2O転換率の減少が確認されたが,DOがおよそ20%以下ではNOが直接的に生成を抑制し,逆におよそ20%以上では促進している可能性が示唆された.実下水処理場では,DO値が20%以下であることも多く,NOをN2O生成抑制因子及び管理指標として利用できる可能性が示唆された.