抄録
本研究では,日本全国の29種類×2期の下水汚泥脱水ケーキを用いて,熱重量・示差熱分析(TG-DTA)により,強熱減量と発熱量を,少量の試料でかつ同時に推定する手法を実験的に検討した.
まず,下水試験方法から求めた強熱減量と,TG曲線から求めた強熱減量は1:1の高い相関を示し,相対誤差の平均値は,1.02%であったことから十分な精度で強熱減量を推定できることが確認された.DTA曲線は,2つのピークを有し,これらのピークの大小から2つのグループに区分できた.多変量解析等から,この違いは,主に消化の有無に由来することが示された.ピーク面積と,校正係数: Kの強熱減量による実験式から求めた低位発熱量と,ボンブ熱量計と元素分析計により求めた低位発熱量を比較したところ,概ね1:1の高い相関が得られ,相関誤差の平均は5.17~5.20%の範囲で,低位発熱量の推定が可能であった.