2018 年 74 巻 5 号 p. I_425-I_436
本研究は,気候変動による環境変化の経済的影響を捉えるために,環境要因(砂浜)を旅行費用法のレクリエーション需要関数と整合的な独立変数として有する効用関数を持った応用一般均衡モデルを用いることによって,砂浜侵食による都道府県別の被害費用の計測,および砂浜回復を目的とした仮想的な適応策の費用便益分析を行うことを目的とする.本研究の結果から得られた主な知見は,1)RCP8.5では砂浜侵食の被害費用は2031年から2050年に174億円/年から252億円/年,2081年から2100年に615億円/年から644億円/年と推定されたこと,2)全ての期間,全てのRCPシナリオ,全ての気候シナリオにおいて,費用便益比が1.0を超える地域は神奈川県,大阪府,佐賀県,熊本県の4府県であったことである.