抄録
既往の研究において,様々な水域の底泥で,有機物量を示す指標と含水比が高い相関を持つことが知られている.しかしながら,複数の水域の底泥調査データを比較・検討した例は少なく,有機物量と含水比の関係性は経験的なものにとどまっている.そこで本研究では富栄養化した複数の海域・汽水域の底泥調査データを解析し,有機物量と含水比の関係性を検証した.解析の結果,主として河口域周辺のデータを除き,TOCと含水比の関係性は水域ごとに大きな違いは見られず,酷似した関係性を示した.加えて,有機物量の変化に応じて含水比がどのように影響を受けるかを検証するために,有機物を過酸化水素水によって分解した底泥試料を作成し,それらを試験管に再堆積させ含水比を測定することにより,有機物量が含水比に及ぼす影響を実験的に調べた.実験の結果,有機物を分解したサンプルは含水比が減少し,有機物量によって含水比が変化することが実験的に明らかになった.以上の結果から,一次生産由来の有機物量は堆積過程の支配因子であり,底泥表層の含水比に強く影響を与えることが明らかとなった.