土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
ISSN-L : 2185-6648
74 巻, 7 号
選択された号の論文の61件中1~50を表示しています
環境工学研究論文集 第55巻
  • 堀尾 明宏, 後藤 淳, 李 富生, 青井 透, 宮里 直樹
    2018 年74 巻7 号 p. III_1-III_7
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     現状,浄化槽(合併処理浄化槽)の8割近い施設は,窒素除去能力を有していない.そこで,本研究では浄化槽への窒素除去法の代替法の一方策として硫黄脱窒法を試みた.実験は,浄化槽やその排水路に適用しやすい開放水路型の形状として,横流れ式モデルを作成し,実試料を用いて硫黄脱窒性能と適用に向けての諸条件について検討した.その結果,浄化槽処理水でも効果的に脱窒効果が得られ,窒素除去型浄化槽と同様な処理性能が得られた.また,事前に硫黄カルシウム基材を処理水に浸漬させておくことで早期の立ち上げが可能となった.除去率は夏季の高温期に高く,8割を超えることもあったが,冬季の低温期では低下した.その対策として,接触量の増加や通水速度の減少によって基材との接触時間を増すことで,窒素除去率の向上を図ることができた.また,基材上の細菌の遺伝子検査では,硫黄酸化脱窒細菌であるSulfurimonas属細菌が確認できた.実験期間中,SSが基材に多く付着し性能低下が見られたため,定期的なメンテナンスが必要であると示された.
  • 古市 昌浩, 張 思斉, 日比野 淳, 西村 修, 山崎 宏史
    2018 年74 巻7 号 p. III_9-III_18
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     日本製浄化槽の海外適用化に際し,異なる使用条件に対処できる小規模汚水処理プラントに変更するための設計手法を見いだす必要がある.そこで本研究では,EUと日本の性能評価方法の相違点である汚水量と汚濁量に着目し,EU向けプラントはBOD容積負荷を日本仕様に合わせて設計し,EU域内にプラントを設置して現地試験を行い,日本仕様の国内試験結果と処理性能を比較・分析した.その結果,EU現地試験では処理水のBODとSSは日本仕様と同等の値を示し,短期間の流入負荷変動に対しても処理水への影響は確認されなかった.さらに,水温による処理能力への影響を分析した結果,浄化槽の海外適用化においては,BOD容積負荷に加え水温による硝化速度の影響を考慮した設計手法が有用と考えられた.また,窒素およびBOD除去のためにはプラント内の水温を13℃以上に保つことが重要と示唆された.
  • 竹田 久人, 西村 修, 李 玉友
    2018 年74 巻7 号 p. III_19-III_26
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     長らく下水道が整備されない可能性が高いフィリピンの小規模自治体において,浄化槽の共同利用による分散型生活排水処理システムの構築を検討するため,建設コストの観点から最適なコミュニティ規模の検討を行った.可住地面積を0.25~1ha,住宅密度を5~20ha,また可住地の形状を変化させた11ケースを設定し,各50個,合計550個の住宅分布を乱数を発生させて作成し,下水管網の試設計を行った.配管延長は,住宅密度のみならず,可住地面積及び可住地のアスペクト比によって決定されることが示された.コミュニティを形成し浄化槽を用いて小規模な集合処理を行う場合,対象とする可住地面積が0.25haでは住宅密度18戸/ha以上,0.5haでは15戸以上,1haでは 11戸/ha以上において,個別に浄化槽を設置するよりも建設費を抑えることができることが感度分析によって示された.
  • 福嶋 俊貴
    2018 年74 巻7 号 p. III_27-III_34
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     流域における水・物質・エネルギー循環拠点としての「資源回収型下水処理場」の実現に向けて,流域の中流に位置するK市の日本でも有数の処理規模である中核処理場を対象にポテンシャル(回収可能性)を試算した.エネルギー回収では,3ヶ所からの受入汚泥や余剰汚泥の可溶化で発電量は51,760 kWh/日まで増加し,電力自給率は28.8 %が期待された.リン回収では,受入汚泥や余剰汚泥も対象とすると脱水ろ液からの回収量が約800 kg/日と多くなり,リン回収率は5割を超えていた. 高度処理化では,対象とした4系のみならず処理場全体でも放流水質の向上が見られ,電力原単位も低下する傾向が見られた.水・物質・エネルギー回収機能を水環境効率で評価すると,現状の2.68 kg/kWhが「資源循環型下水処理場」を実現することで4 kg/kWhまで向上すると期待された.
  • 杉原 幸樹, 増木 新吾, 管原 庄吾, 新目 竜一
    2018 年74 巻7 号 p. III_35-III_41
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     塩淡二層汽水湖の網走湖において,塩水層の貧酸素水塊の解消を目的として,現地に気液溶解装置(WEP)を建設して酸素供給による水質変化について実水域で観測を行った.二ヶ月間の酸素供給を行った結果,装置周辺では溶存酸素の上昇が確認されたが,その範囲は非常に小さかった.硫化水素による酸素消費が大きく,溶存酸素として検出できないことが確認された.一方で酸素供給時に固体硫黄が析出して濁度が上昇することから,濁度をトレーサーとすると,底層水塊の流れに沿っておよそ120 m四方に酸素供給効果が波及していることが確認された.また水質分析の結果から,WEPによる酸素供給によって,硫化水素の減少とともに,リン及び窒素の減少も確認された.このことから,特定標高の層における汽水性貧酸素水塊の無毒化及び栄養塩濃度の減少が可能であることが示唆された.
  • 服部 啓太, 中村 由行, 井上 徹教, 比嘉 紘士, 内藤 了二, 岡田 知也
    2018 年74 巻7 号 p. III_43-III_51
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     既往の研究において,様々な水域の底泥で,有機物量を示す指標と含水比が高い相関を持つことが知られている.しかしながら,複数の水域の底泥調査データを比較・検討した例は少なく,有機物量と含水比の関係性は経験的なものにとどまっている.そこで本研究では富栄養化した複数の海域・汽水域の底泥調査データを解析し,有機物量と含水比の関係性を検証した.解析の結果,主として河口域周辺のデータを除き,TOCと含水比の関係性は水域ごとに大きな違いは見られず,酷似した関係性を示した.加えて,有機物量の変化に応じて含水比がどのように影響を受けるかを検証するために,有機物を過酸化水素水によって分解した底泥試料を作成し,それらを試験管に再堆積させ含水比を測定することにより,有機物量が含水比に及ぼす影響を実験的に調べた.実験の結果,有機物を分解したサンプルは含水比が減少し,有機物量によって含水比が変化することが実験的に明らかになった.以上の結果から,一次生産由来の有機物量は堆積過程の支配因子であり,底泥表層の含水比に強く影響を与えることが明らかとなった.
  • 大原 光司, 湯上 洋平, 川畑 達矢, 藤林 恵, 西村 修, 坂巻 隆史
    2018 年74 巻7 号 p. III_53-III_61
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     内湾海水に対する栄養塩・金属類の添加培養試験に脂肪酸組成分析を組み合わせ,複数の一次生産者分類群の制限因子を一括で特定することを試みた.2017年9月に志津川湾より採取した海水について評価した結果,POCやクロロフィル aの生産の主たる制限因子は窒素であることが示された.脂肪酸組成分析からは,窒素添加が特に細菌または藍藻による粒子生産を顕著に増大させたこと,珪藻・渦鞭毛藻・緑藻に由来する脂肪酸の生産はリン制限であったことが示された.本手法により,陸域から負荷される物質組成の変化に対する内湾一次生産者の応答の予測に有用であることが示された.今後,マーカー脂肪酸の保存性などを明らかにし本手法により適正な評価が行える条件を引き続き検討する必要がある.
  • 川畑 達矢, 藤林 恵, 湯上 洋平, 西村 修, 坂巻 隆史
    2018 年74 巻7 号 p. III_63-III_71
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     底層の貧酸素化が認められている宮城県志津川湾において,海水中粒状有機物の量と組成,その海水中での溶存酸素消費に与える湾内のカキ養殖の影響を評価した.その結果,夏季において養殖場内外とも酸素消費が突出して大きく,さらに酸素消費速度は粒状有機物中の藻類由来マーカー脂肪酸含有量と強い正の関係を示した.夏季には藻類由来有機物が酸素消費に大きく寄与していたと考えられる.また,養殖場内では場外と比較し細菌由来マーカー脂肪酸と酸素消費の関係が弱く,さらに藻類由来マーカー脂肪酸割合がやや低かったことからカキ養殖により海水中粒状有機物の分解性が低下していたと考えられる.脂肪酸は酸素消費に寄与する有機物の起源を評価するうえでのマーカーとして有用であるとともに,有機物の酸素消費能の予測にも使用できる可能性が示された.
  • 山﨑 廉予, 重村 浩之
    2018 年74 巻7 号 p. III_73-III_81
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究室では,下水道資源を活用した自然発生微細藻類の培養技術の確立および培養藻類のエネルギー利用手法の検討を行っている.本研究では,下水道資源である下水汚泥を,生下水による藻類培養に活用することで藻類培養の効率化を行うことを目的とし,ラボスケールで2~3週間の藻類培養実験を行った.その結果,余剰汚泥を生下水に比較的低濃度で適当量混合し,藻類培養の基質として利用することで,藻類培養量を増加させられる可能性が示唆された.また,汚泥の添加は,藻類への栄養塩の供給,基質中の溶解性有機物の除去の効率化,藻類数や光合成細菌の増加,藻類培養の光合成に必要なCO2の添加量の削減,高位発熱総量の増加が見込める可能性が示唆され,藻類培養によるエネルギー回収量の増加に寄与する可能性が示唆された.下水汚泥を有効的に利用することで,下水処理場における自然発生微細藻類培養システムの高効率化の可能性が示された.
  • 白岩 卓也, 伊藤 歩, 石川 奈緒, 金 郁磨, 佐々木 正之, 高舘 尚史, 笹本 誠, 海田 輝之
    2018 年74 巻7 号 p. III_83-III_92
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     初沈汚泥と余剰汚泥の混合汚泥を嫌気性消化すると,MAPによる後段の送泥管や脱水機スクリーンの閉塞を引き起こす場合がある.MAPの構成元素であるMgとPの消化槽への負荷量は余剰汚泥の方が3~4倍程度高く,消化槽内でのMAP生成を抑制するには余剰汚泥中のMg量を低減する必要がある.余剰汚泥の嫌気培養によってMg,P,Kが溶出し,それらの溶出速度は有機炭素源として初沈濃縮汚泥を添加することで向上した.また,余剰汚泥の遠心分離液中のMg,P,Kは電気透析によって濃縮液として回収できた.さらに,既存の余剰汚泥貯留槽に初沈濃縮汚泥を添加し,6時間嫌気培養した後,既存のスクリュー式濃縮機で機械濃縮することで濃縮汚泥中のMg,P,Kの40~50%程度を濃縮分離液に移行できた.
  • 西村 文武, 篠本 知沙, 小林 裕典, 水野 忠雄, 高部 祐剛, 楠田 育成, 日高 平
    2018 年74 巻7 号 p. III_93-III_100
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究では有機性廃棄物から生分解性プラスチックの原材料となるL-乳酸を得る非滅菌高温L-乳酸発酵処理法の効率化について検討した.L-乳酸の収率向上のためには,でんぷん等の多糖の転換効率を上げることが重要になる.そこで,模擬生ごみを用いて,多糖からL-乳酸発酵を促進する成分の探索,共存物質としての有機性窒素化合物やミネラル分添加の効果,温度やpHの環境条件の影響について調査するとともに,多糖含有有機素材である多収穫米からの非滅菌高温L-乳酸発酵処理特性と効率化について検討した.共存素材の影響については,バナナの果皮が全糖分解およびL-乳酸発酵を促進すること,溶性でんぷんの発酵前の加熱処理効果は限定的であること,Yeast Extractおよびポリペプトンの添加は全糖分解率および乳酸収率を向上させることを明らかにし,米の発酵における最適添加濃度を把握した.一方,ミネラルの添加は,有機窒素窒素化合物添加に比べて促進効果が小さく,温度を37°Cから70°C,またpHを4.5から7に変化させた実験結果より,米を基質としたL-乳酸発酵において,温度55°C,pH5.5が最適条件であることを提示した.
  • 山田 真義, 山内 正仁, 徳田 裕二郎, 池田 匠児, 八木 史郎, 樗木 直也, 黒田 恭平, 原田 陽, 山口 隆司
    2018 年74 巻7 号 p. III_101-III_109
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     下水汚泥堆肥を用いたマッシュルーム(ツクリタケ,Agaricus bisporus)栽培における生産性向上を図るために,原基誘導促進に必要不可欠な覆土資材(ピートモス)の物性に着目し,栽培試験を実施した.その結果,密度が高く,吸水率が低い資材で培地を被覆すると,収量は従来の1.5~1.7 倍に増加し,目標収量値(150~250kg/1,000kg 堆肥)を達成できた.また収穫期ごとの子実体成分特性を調査し,子実体成分は収穫期で大きく異なり,特に収穫期後半では蛋白質量が増加することがわかった.さらに廃培地を堆肥の一般的な施用法で葉菜類の栽培試験に供した.コマツナでは対照区(牛糞堆肥区)よりやや生育が低下したが,チンゲンサイでは同等以上の生育がみられた.廃培地施肥による発芽抑制は全く見られなかった.
  • 賀須井 直規, 中谷 隼, 春日 郁朗, 古米 弘明
    2018 年74 巻7 号 p. III_111-III_122
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     持続可能な水道システムの実現に向けた取り組みとして水道広域化やアセットマネジメント(AM)が注目されているが,水源量や水需要量といった制約条件や施設状態に関する将来の時間的変化に適切に対応させた,広域・長期での水道施設運用・更新計画を立案するための手法は確立されていない.
     本研究では,水源における取水から配水池への送水までの水道システムを解析対象として,その運用・更新計画の立案問題を数理的に定式化した上で数理最適化を適用することで,必要な施設更新を遂行しつつライフサイクル費用が最小となる計画を立案するための手法を開発した.
     事例分析として,群馬県東部地域を想定した仮想の地域(人口約45万人,面積約400 km2)において,8水道事業体による個別給水による水道システムを仮想的に取り上げた.向こう50年間を対象に,仮想的に与えた浄水場と主要管路施設の初期状態,時系列的な取水可能量や水需要量,地形といった制約条件に基づき本手法を適用した.広域化による事業体間での浄水場のネットワーク化や統廃合を検討した場合,それらを検討しない個別事業体単位での計画案に比べ,全計画期間を通じた平均費用が10.4%小さくなった.また,浄水場の利用年数上限を90年から70年に短くする老朽化対策に係る費用は,広域化検討によって8.9%削減された.施設老朽化対策を含むAMと広域化とを統合的に考慮することは,経済性の向上において有効であることが示唆された.
  • 川勝 智, 滝沢 智
    2018 年74 巻7 号 p. III_123-III_132
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     鋳鉄管やダクタイル鉄管などの鉄管は既設の水道管の約6割を占めるが,その老朽化に伴う腐食が重要な課題となっている.しかし,従来使われてきた宮田らの腐食予測式は,腐食深さ0 mmのデータを除外しており,また腐食速度の確率分布を示すことができなかった.そこで本研究では,これらの点を改善し,腐食性による埋設環境(土質,土壌比抵抗)の分類法を示すとともに,埋設環境ごとの腐食深さの確率分布をBootstrap法により推定した.その結果,鉄管の5 %が腐食深さ6 mmに達する期間は,土壌比抵抗1500 Ω・cm未満の場合では,砂系土質で45年以上,シルト系で約40年,粘土系では約30年と推定された.また,腐食性が低い埋設環境でも,腐食性が高い海成粘土に隣接することで腐食性が高まるため,周辺環境も含めた調査と解析が重要であることを示した.
  • 松原 康一, 橋本 崇史, 小熊 久美子, 滝沢 智
    2018 年74 巻7 号 p. III_133-III_142
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     持続可能な開発目標(SDGs)の安全な水へのアクセス目標の達成には,資金の確保と投資効率の改善が必要である.そこで本研究では,政府開発援助(ODA)の効果の定量化を目的として,ミレニアム開発目標(MDGs)期間の各国の社会経済指標と,基本的な水供給へのアクセス率の関連を解析し,またODA額と資金割合から改善効果を定量化した.その結果,基本的な水供給へのアクセス率改善は一人当りGDP,HDI と正の相関がある一方,経済発展のみでなくODAの効果が大きい可能性が示された.MDGs における改善人口あたりの水供給施設へのODA投資額(CAPEX)は17カ国平均で365 USD/人(95%信頼区間で148-931 USD/人)と推定され,投資効率をこれと同程度と仮定すると,2030年に全人口が基本的な水供給にアクセスできるための必要投資額は年平均48.7億USDとなり,より多くの投資の必要性が示唆された.
  • 牛島 健, 石井 旭, 福井 淳一, 松村 博文
    2018 年74 巻7 号 p. III_143-III_152
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     人口減少地域での水道存続に向けた選択肢の一つとして,行政の維持管理によらない地域自律管理型水道に着目した.現地聞き取り調査から,(1)工事を含む維持管理の大半が自前でできていること,(2)利用者と維持管理主体が一致しており,断水などの多少の不便が許容されていること,(3)水道利用組合の作業が農村の互助のスキームと調和しており,担い手側が当面はその作業を受容できていることなどにより,簡易水道と比べても低コストで運営できていることがわかった一方,(4)水質リスク管理体制,(5)アセット情報の整備の2つの面では,現状の地域自律管理型水道は課題を抱えていると考えられた.これらの課題を解決する低コスト・シンプルな技術パッケージの提案と,地域自律管理を支える行政と専門家の支援体制づくりが重要と考えられた.
  • 那須川 康平, 松前 大樹, 藤井 学
    2018 年74 巻7 号 p. III_153-III_160
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     淡水性藍藻類の一種であるMicrocystis aeruginosaは, 肝臓毒であるmicrocystin(MCs)を生成する. 既往研究ではMCs生成に細胞酸化ストレスが関与していること指摘されているが, MCs生成や酸化ストレスに影響を及ぼす水質・環境因子については不明な点が多い. 本研究では, M. aeruginosaの培養過程で鉄制限することによって細胞酸化ストレスを与え, MCs生成と酸化ストレスの関係ならびに酸化ストレスを引き起こす鉄濃度範囲とMCs生成を解明することを目的とした. その結果, 鉄濃度が100 nM以下において酸化ストレスが上昇した. さらに, 低い鉄濃度20 nMでは, 細胞あたりのMCs量が増加することが明らかとなった.鉄濃度の上昇とともに細胞増殖速度は概ね増加し, 増殖速度を考慮したMCsの総生成速度(細胞MCs量と増殖速度の積: fg/day)は鉄制限が中程度(鉄濃度が100 nM)の際に最小となることが示された.
  • 帆秋 利洋, 片平 智仁, 沖田 紀子
    2018 年74 巻7 号 p. III_161-III_168
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     海水にLED照射した際の微細藻類の優占種についてDNA解析を行った. その結果, 光源が太陽光のみの場合は, 珪藻類と渦鞭毛藻類が検出されたのに対し, 太陽光+LED(青色+赤色)の条件では, 真核藻類の占める割合が増大すると共に緑藻類と珪藻類, クリプト藻類が優占化した. 一方, 青色波長と赤色波長で照射した条件における優占微細藻類について調べた結果, 赤色LEDにおいては, 全てのクローンが藍藻類(Synechococcus種)に近縁のクローンが検出されたのに対し, 青色LEDは珪藻類(Chaetoceros属の近縁種等)が優占した. 本結果から, 赤色LEDは藍藻類の優占化を促し, 青色LEDは珪藻類の優占化を促す傾向のあることが示唆された. また, 赤色LEDで優占化した藍藻クローンは, 毒素産生性株に近縁であり毒性が懸念されるが, 青色LEDで優占化した大部分の珪藻クローンは, 水産養殖等で餌料として利用される有用種の近縁であった.
  • 鈴木 元彬, Chomphunut POOPIPATTANA, 春日 郁朗, 古米 弘明
    2018 年74 巻7 号 p. III_169-III_179
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     東京港内にあるお台場海浜公園などの親水空間において,合流式下水道雨天時越流水(CSO)に起因した糞便汚染が問題視されている.本研究では2017年の10-11月の降雨を対象に隅田川上流部から台場周辺海域に至る水域で経日的な表層水の採水を行い,指標細菌類4種類(大腸菌,大腸菌群,糞便性大腸菌群,腸球菌),ウィルス指標2種類(F特異大腸菌ファージ,体表面吸着ファージ)の分析を行った.降雨直後に細菌類は2桁程度,大腸菌ファージは1桁程度濃度が増加した.また沿岸域においては,大腸菌の消長が高い塩分濃度の影響を受けていることが示唆された.指標微生物間の相関性は細菌類の間で非常に高く,指標微生物の消長に着目したクラスター分析の結果,指標微生物は細菌類と2種の大腸菌ファージの3グループに類型化された.
  • 鬼束 幸樹, 秋山 壽一郎, 藤木 翼, 窄 友哉
    2018 年74 巻7 号 p. III_181-III_185
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     迷入防止や混獲の対策として魚の行動を制御する方法があり,その方法の1つとして光の活用が挙げられる.光に対する反応が魚種によって異なることが示唆されているが,ウナギ等の底生魚を対象とした研究はほとんど行われていない.本研究では静止流体中に照射する光の明暗および色を変化させ,それらがウナギの稚魚であるクロコウナギの遊泳特性に及ぼす影響について検討した.最大全光束4000lmの光の色を紫,青,緑,赤,および白に変化させた結果,明暗および光の色の変化がウナギの行動特性に影響をほとんど与えないことが確認された.体長や尾数,照度,水温等の条件を変化させた際に異なる結果となる可能性もあり,今後の研究の発展が望まれる.
  • 髙島 正信, 中尾 総一
    2018 年74 巻7 号 p. III_187-III_194
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     下水汚泥の全固形物質(TS)約10%および約15%の高濃度嫌気性消化において,余剰汚泥部分に前処理を組み合わせ,消化性の改善とアンモニア阻害の低減について実験的に検討した.前処理は,流入TS約10%は加熱処理(130℃,1時間),約15%は加熱処理に続けてアンモニアストリッピング(約80℃,初期pH約9,3時間)とした.前処理が組み合わされると,両流入濃度ともVS分解率は約4%上昇したが,メタン発生率の向上はわずかだった.流入TS約15%では,アンモニアストリッピングによって消化汚泥中アンモニア性窒素が平均約3,100mgN/Lに抑制されたことが良好な運転につながった.よって,余剰汚泥の前処理を用いれば,流入TS約15%まで高濃度嫌気性消化の可能なことが示された.
  • 朱 愛軍, 呉 競, 覃 宇, 北條 俊昌, 李 玉友
    2018 年74 巻7 号 p. III_195-III_203
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究は,生ごみと紙の混合ごみからエネルギーを回収することを目的とし,高温条件における完全混合型反応槽を用いた連続メタン発酵実験を行い,生ごみと紙の混合メタン発酵に及ぼす滞留時間の影響を考察した.C/N比を固定し,滞留時間を30日から5日まで変化させ,長期的な運転におけるプロセスの安定性,バイオガス収率および有機物分解特性を評価した.その結果,滞留時間が7.5日まではプロセスの安定運転が可能であり,生ごみと紙の混合ごみを原料としたメタン発酵によるエネルギー回収の可能性が明らかになった.TS,VS,COD,炭水化物のそれぞれの分解率は滞留時間が30日の条件で,それぞれ78.1%,79.0%,78.9%,91.5%と高い値が得られた.また,プロセスの運転が安定していた時,滞留時間にかかわらず各有機物分解率に顕著な差は見られなかった.バイオガス生成速度は有機物負荷に比例して増加する傾向が見られ,滞留時間が7.5日の時に8.51L/L/dとなった.滞留時間が5日の条件ではプロピオン酸の生成が始まり,揮発性脂肪酸の蓄積によりプロセスが酸敗した.
  • 日高 平, 佐野 修司, 吉田 弦, 西村 文武
    2018 年74 巻7 号 p. III_205-III_214
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     規模が小さな下水処理場での集約混合嫌気性消化導入を想定して,オキシデーションディッチ法からの脱水汚泥を対象に,消化汚泥を液肥とした草本作物栽培実験および混合嫌気性消化実験を行った.約2か月間の栽培期間での牧草の収穫量は,乾燥重量で0.23 kg/ m2程度であった.嫌気性消化実験での牧草の有機物(VS)あたりのバイオガス発生率は,そのまま投入した場合0.5NL/ gVS-added程度,80℃ 24時間の超高温可溶化処理を行った場合0.6 NL/ gVS-added程度であった.牧草投入が嫌気性消化に関わる微生物群集に及ぼす影響は限定的であった.草本作物により増加するバイオガス量および草本作物栽培に必要な施肥面積の観点で,提案システムの実現可能性を確認した.
  • 戸苅 丈仁, 三崎 岳郎, 清水 浩之, 松浦 哲久, 本多 了, 池本 良子
    2018 年74 巻7 号 p. III_215-III_223
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     下水処理場に未利用バイオマスである稲わらを集約し,下水汚泥と混合メタン発酵処理を行い,発生残渣を肥料等で農地に還元するシステムにおいて,稲わら収集および下水汚泥肥料利用についてのアンケート調査を,石川県加賀市の農家を対象に実施した.アンケート調査では,稲わらの収集・運搬・保管を行い,下水処理場に搬入してメタン発酵処理後に発生する残渣を汚泥肥料や土壌改良剤として農地に還元する地域内循環システムを想定し,コンジョイント分析を用いて,農家の稲わら収集システムへの協力行動の影響因子を求めるとともに,農家のシステム利用意思を調査し,システムの実用性を検証した.その結果,農家のシステム協力行動の影響因子として最も重要度が高いのは「収集手間」であり,続いて「保管場所」および「製造肥料の提供単価」となり,「稲わら売却単価」の重要度は低いことが確認された.また,システム利用意思調査結果では,「金銭的なメリットがあるなら利用する」まで含めると71%の農家の協力が得られることが確認された.
  • 政池 美映, 小熊 久美子, 橋本 崇史, 滝沢 智
    2018 年74 巻7 号 p. III_225-III_230
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     無水銀の紫外線光源として注目される紫外発光ダイオード(UV-LED)を水産養殖の水処理に応用する可能性を検討するため、水産業において重要な処理対象である病原細菌の腸炎ビブリオVibrio parahaemolyticusを人工海水またはリン酸緩衝液に分散し、発光ピーク波長265、280、300 nmのUV-LED照射による不活化効果を培養法で評価した。その結果、紫外線量あたりの不活化率を示す不活化速度定数kの値は、265、280、300 nmのUV-LEDの順に、人工海水中で0.38、0.24、0.02 cm2/mJ、リン酸緩衝液中で0.40、0.28、0.02 cm2/mJとなり、いずれの溶液でも265 nmのUV-LEDが最も高い不活化効率を示した。一方、3log不活化に要する消費電力量を試算したところ、265、280、300 nmのUV-LED の順に、人工海水中で0.92、0.42、4.15 kW/m3、リン酸緩衝液中で0.80、0.41、4.71 kW/m3となり、いずれの溶液でも280 nmのUV-LEDの電力効率が最も高かった。本研究により、UV-LEDの水産養殖への応用に関する基礎的知見が得られた。
  • 廣木 颯, 畔柳 聴, 坂本 信介, 小林 郁雄, 上村 涼子, 糠澤 桂, 鈴木 祥広
    2018 年74 巻7 号 p. III_231-III_238
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     畜産動物は抗菌薬を投与される場合があり,薬剤耐性菌の発生源となり得る.また,ネズミなどの小動物が,畜産動物の残餌やふんなどを摂餌する様子も観察されている.したがって,畜産動物から小動物へと薬剤耐性菌が伝播され,自然環境へ拡散する可能性は否定できない.本研究では,住吉牧場で飼育される肉用牛と畜舎周辺の野生ネズミを対象に,11種類の抗菌薬に対する薬剤感受性試験を実施した.ウシとネズミで,1剤以上に耐性を示した大腸菌が検出された個体の割合は,それぞれ50.0%と41.2%であった.また,両方のふん便からアンピシリンとテトラサイクリンに耐性を示した大腸菌が検出された.薬剤耐性を保有する畜舎内のウシと畜舎周辺におけるネズミの分布状況から,ネズミが薬剤耐性大腸菌を媒介し,環境に拡散している可能性が示唆された.
  • 中村 寛治, 奥田 春香
    2018 年74 巻7 号 p. III_239-III_245
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     細菌捕食性原生動物の18S rRNA遺伝子を標的としたqPCR用のユニバーサルプライマーを設計し,その有効性を検討した.18S rRNA遺伝子検出用のプライマーは,過去の18S rRNA遺伝子の塩基配列解析結果を基に,コンセンサス配列の部分を決定した上で設計した.18S rRNA遺伝子の開始点から 約500 basesの領域と約1000 basesの領域から,異なる2種類のqPCR用のプライマーペアを設計した.これら2種類のプライマーペアを使って,広瀬川河川水から抽出したDNAを対象にqPCRを行った.その結果,それぞれの18SrRNA遺伝子数の値が極めて近くなり,測定値は妥当であることが示唆された.また,16S rRNA遺伝子数も測定し,関連性を解析した結果,一定の範囲で比例関係にあることが分かった.
  • 平田 光, 林 真由美, 野村 一樹, 重松 亨, 井口 晃徳
    2018 年74 巻7 号 p. III_247-III_253
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     グラム陰性細菌のEscherichia coliおよびグラム陽性細菌のRhodococcus equi菌体に対し、高圧を利用した細胞壁処理がCARD-FISH法に及ぼす影響を検証した。結果、高圧単独での処理ではほぼすべての条件でE. coli, R. equi菌体両方からの蛍光シグナルは確認できなかったが、リゾチームやアクロモペプチダーゼなどの酵素処理に高圧処理を組み合わせることで、それぞれを単独で処理した場合よりも強い蛍光シグナルを得られることが判明した。このことから処理圧力レベル、処理温度、酵素濃度の条件を適切に設定した上で細胞壁処理を行えば細胞壁構造の異なる微生物に対しても強い蛍光シグナルを得ることができ、高圧処理がCARD-FISH法における汎用的かつ有効な細胞壁処理として適用できることが示された。
  • 蔵下 はづき, 平片 悠河, 高木 素紀, 幡本 将史, 牧 慎也, 山口 隆司, 青井 透, 黒田 恭平
    2018 年74 巻7 号 p. III_255-III_264
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究では,連作障害が発生したレンコン栽培実圃場を対象とし, 線虫被害の程度の違いにおける微生物群集比較解析,寄生性線虫の定量PCR,有用微生物優占化土壌改良資材を用いたレンコン栽培土壌の回分培養を行うことで,化学農薬に依らない防除方法の確立を目指した.被害程度の差における優占種の同定を行った結果,被害の大きい圃場においてAcidobacteria門,Chloroflexi門の未培養グループに属する微生物が優占して検出された.被害の生じたレンコン細根中の寄生性線虫の定量PCRを行った結果,Hirschmanniella diversa及びH. imamuriの2種の寄生が確認された.土壌改良資材の施用効果を評価した結果,Bacillus属がレンコン栽培土壌で増殖可能なことが分かった.
  • 池田 和弘, 柿本 貴志
    2018 年74 巻7 号 p. III_265-III_274
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究では,リアルタイム性が高く,同時に負荷源の情報を得ることができる,蛍光分析による河川水質モニタリング手法の構築のための検討を行った.まず埼玉県内の環境基準点を含むを38か所の河川水の定期的な蛍光分析により1219個のEEMデータを取得した.次にPARAFAC解析により8個の蛍光成分を分離・定量した.このうち,3つは腐植物質,2つはアミノ酸であり,残りは,植物プランクトンの分解産物,蛍光増白剤DSBP,下水処理水に多い成分由来と同定された.最後に,BODと蛍光成分の回帰分析により,BODを高精度で予測する重回帰モデル式を作成した.このモデル式においては,藻類による負荷と下水処理水による負荷を分離検出するための蛍光成分が決定された.
  • 山口 武志, 山下 尚之, 田中 宏明
    2018 年74 巻7 号 p. III_275-III_284
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     淀川水系の桂川において,雨天時の下水処理場の簡易処理放流による放流水及び河川水の水質変化を評価し,水質の監視につなげることを目的として,溶存態有機物の挙動特性と下水処理放流水及び河川水に含まれる溶存態有機物の存在実態を,EEM-PARAFACにより明らかにした.下水処理場を対象に雨天時調査及び晴天時調査を行った結果,晴天時流入水に多く含まれる主成分のうち,簡易処理放流の雨天時放流水質へ与える影響の最も大きいものはタンパク質様成分であった.下水処理放流水及び河川水に対して雨天時調査を行った結果,晴天時流入水に多く含まれる主成分のうち,簡易処理放流の放流口下流側の雨天時河川水質へ与える影響の最も大きいものはタンパク質様成分であった.よって,本成分をDOCの簡易指標として蛍光センサで常時監視することの有効性が示された.
  • 木村 慎一, 新谷 仁美, 岩永 秀, 江原 和宏, 久野 草太郎, 荒井 康裕, 稲員 とよの, 小泉 明
    2018 年74 巻7 号 p. III_285-III_294
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     近年, 河床に付着する藍藻Phormidium autumnaleが産生及び放出するかび臭による利水障害が顕在化している. 東京都の水道水源である多摩川上流域は清澄な水質であるが, この藍藻により, 小作浄水場の原水で200ng/Lを超える高濃度の2-MIBが検出され, 粉末活性炭による厳しい対応を余儀なくされている. 本研究では, 今後の浄水管理等に活用するために, 2-MIB濃度の短期的な予測や最大濃度の予測を可能にするモデルの構築を目指した. 相互相関コレログラムや重回帰分析といった統計学的手法を適用し, オンラインで自動計測された平成27年度の3千を超える1時間刻みの水温データから2-MIB濃度を予測する重回帰のモデル式を得た. それを平成28年度のデータで検証したところ, 予測値と実測値の相関係数は0.853の高い数値が得られ, 2-MIB濃度を精度よく予測できることを確認することができた.
  • 西田 渉, 楠葉 貞治, 小林 徹, 南 潤一朗
    2018 年74 巻7 号 p. III_295-III_303
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     内湾の水環境保全を効果的に実施するためには,当該海域における物質の循環機構を予め把握しておく必要がある.内湾では,潮汐や海上の風で生じる流れによって栄養塩等の物質が流送されるため,物質の物理的循環過程を明らかにする上で流れの生成要因の適切な評価が欠かせない.
     本研究では,海上の気象条件の時空間分布の評価に数値気象モデルの利用を図ることとして,まず,伊万里湾を対象に気象シミュレーションを実施し,周辺陸域と海上で観測された風向・風速の再現性を検討した.つぎに,気象モデルから得られた計算結果を用いた潮流の数値シミュレーションを行い,風の空間分布が湾内の物質流動に及ぼす影響を検討した.
  • 岡本 侃大, 東條 安匡, 松尾 孝之
    2018 年74 巻7 号 p. III_305-III_316
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     乾燥地域の埋立地における廃棄物の乾燥化メカニズムを明らかにすることを目的に,土壌層における物質移動理論を用いて水分・熱同時移動モデルを構築し,数値解析を行った。同時に,室内実験によって廃棄物の不飽和水分移動特性およびモデルの妥当性評価を行った。その結果として,(1)粗大間隙を有する廃棄物においても物質内部に存在する微細な間隙を介して液状水移動が生じること,(2)モデルは廃棄物の乾燥過程を概ね再現可能であること,(3)乾燥地域の埋立地において,廃棄物の乾燥は,30年経過後も埋立地表面付近までしか及ばないこと,(4)廃棄物の乾燥速度は,廃棄物の乾燥が埋立地内部に及ぶにつれて遅くなることを明らかにした。さらに,廃棄物の水分特性曲線を,0%付近から50%までに及ぶ広い含水率範囲で測定した。
  • 白石 直輝, Sonia Muradia SHARMA, 小宮 哲平, 島岡 隆行
    2018 年74 巻7 号 p. III_317-III_323
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     最終処分場の残余容量が不足する自治体において、焼却残渣をセメント原料として有効利用する等の再資源化により埋立処分量の削減が図られている。焼却灰の塩素含有量は数%オーダであるのに対し、普通ポルトランドセメントの塩素含有量基準値は0.035%であり、焼却灰を有効利用するには脱塩が必要である。本研究では、一般廃棄物焼却灰の脱塩において水洗前に二酸化炭素ガスへ曝露する方法(焼却灰の炭酸化)に着目し、焼却灰の炭酸化の最適条件(焼却灰の含水比、通気流量、通気時間)について検討した。その結果、焼却灰の最適な含水比は0.3、通気流量は1000mL/min以上、通気時間は3時間以上であることを示し、その最適条件で炭酸化処理した焼却灰を水洗することにより、全塩素含有量が1.39%であった焼却灰の全塩素含有量を約0.5%に、難溶解性塩素含有量を約0.2%までに減少することができた。
  • 前田 拓磨, 小宮 哲平, 中山 裕文, 島岡 隆行, 平尾 隆行, 渡辺 修士, 竹本 誠, 鵜飼 亮行, 加島 史浩, 前田 直也
    2018 年74 巻7 号 p. III_325-III_332
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     廃棄物が海水に没し,有機物の分解や汚濁成分の洗い出しが緩慢である海面処分場では,早期安定化が懸案事項となっている.焼却灰は粒径が小さいほど汚濁成分を多く含むことが知られており,細粒子区分の焼却灰を除去して海面処分を行うことにより,海面処分場の早期安定化が期待される.本研究では,一般廃棄物焼却灰から細粒子区分を除去する方法として開水路分級に着目し,開水路分級実証実験を行い,開水路の水理特性の把握とともに,水路底面に堆積した沈降焼却灰は細粒子区分(ここでは粒径0.425mm以下と定義)が除去されたものであるかの確認を行った.
  • 景政 柊蘭, 長町 晃宏, 井口 晃徳, 久保田 健吾, 高橋 優信, 原田 秀樹, 押木 守, 荒木 信夫, 大久保 努, 上村 繁樹, ...
    2018 年74 巻7 号 p. III_333-III_340
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     水不足が深刻な乾燥地域開発途上国であるエジプトは,灌漑用水として下水処理水の再利用を推奨しているが,衛生学的な利用基準を満たしていない.最初沈殿池にDown-flow Hanging Sponge (DHS)を組み合わせた下水処理システム(初沈+DHSシステム)において,HRTを0.8~4.8時間の間変化させ,糞便性大腸菌群の低減を確認した結果,全てのHRTにおいてエジプトの灌漑用水基準(5×103 MPN/100mL)を達成することは困難であった.DHSの後段処理法として銅イオンによる殺菌処理を検討した結果,銅イオン濃度 2 mg/L,静置時間を2時間以上確保することでDHS処理水の衛生学的安全性を確保できると考えられた.また,銅イオンDHS処理水によるトマトの生長阻害及び葉への銅イオン蓄積は確認されなかった.
  • 渡部 徹, 堀口 健一, 松山 裕城, Dong Duy PHAM, Lanh Danh TRAN, 西山 正晃, Dung Viet PH ...
    2018 年74 巻7 号 p. III_341-III_348
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     先行研究では,下水処理水の連続灌漑によって低コストで,タンパク質の含有率の高い米を生産できることを実証した.タンパク質は家畜飼料の重要な成分であり,その含有率の高い米は一般に飼料としての価値が高い.下水処理水栽培米の家畜飼料としての有用性を調べる第一歩として,本研究では2つの試験を実施した.第一はウシに対する嗜好試験で,下水処理水栽培米と食用米を並べて給餌すると,ウシは両者を同程度に食べた.下水処理水栽培米に含まれる成分は,ウシの嗜好性に影響を与えなかった.第二の試験では,下水処理水栽培米を含む配合飼料を卵用鶏に給与し,卵の生産量と品質を調べた.その成績は,対照としてのトウモロコシを含む配合飼料を給与したケースと遜色がなく,下水処理水栽培米を家畜飼料として用いることに問題は見られなかった.
  • 伊藤 絵里香, 木村 香月, 西山 正晃, 今田 義光, 大村 達夫, 渡部 徹
    2018 年74 巻7 号 p. III_349-III_356
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     2 つの都市下水処理場の影響を受ける仙台市の蒲生干潟において,2017年10月から2018年2月に渡り,自生する牡蠣およびイソシジミに蓄積されたノロウイルス量の分析を行った.牡蠣とイソシジミどちらも,感染性胃腸炎の流行前から体内にノロウイルスを蓄積させていた(牡蠣で中腸腺1gあたり2.2 log copies,イソシジミで2.5 log copies程度).ノロウイルスGIIの蓄積量は,感染性胃腸炎患者の増加に伴って明らかに増加していた.ここで明らかとなった牡蠣およびイソシジミのノロウイルスGII蓄積量は,干潟に近い下水処理場流入水中のウイルス量とは相関関係がなかった.一方で,仙台市の胃腸炎患者報告数との間には有意な相関が見られ,市内での感染症流行対策を行うことが,二枚貝の安全性の向上につながることが示された.
  • 高荒 智子, 林 聡宏, 芥川 一則, 渡部 徹
    2018 年74 巻7 号 p. III_357-III_365
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     A町では,原子力発電所事故の後,全町民に避難指示が出された.約1年後にそれが解除され,町民の帰還が進んでいる.同時に,復興事業の為に多くの作業員が滞在し,A町の人口は事故前に比べて約1.5倍に増えている.人口増加にともないA町の既存浄水場の配水量も増加し,処理能力の限界に近づいていた.作業員宿舎からの生活排水が周辺水環境に与える影響については,宿舎に設置された浄化槽は正常に機能しており,処理水のBODは低かった.この水質から推定した作業員宿舎からの汚濁負荷は,河川のそれに比べて無視できるほど小さかった.この例の通り,原発事故後の住民の避難は長期に及び,移動範囲も広い.これを踏まえて,上水道の広域化,作業員宿舎や仮設住宅の立地検討などの準備が肝要である.
  • Wutyi NAING, Hidenori HARADA, Shigeo FUJII, Chaw Su Su HMWE
    2018 年74 巻7 号 p. III_367-III_374
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     In developing countries, many tons of valuable nutrients (mainly nitrogen (N) and phosphorus (P)) are lost as waste derived from daily life and agriculture. Nutrient load quantification is an early step for recognizing environmental pollution, and a basic requirement for planning environmental sanitation options. Material flow analysis (MFA) has been used in the environmental sector in many cities of developing countries. In Mandalay, under rapid urbanization, environmental problems have risen to an alarming level. In this study, a nitrogen and phosphorus flow model was developed with a focus on organic waste. The system boundary was five urban townships of Mandalay city and components included in the system were agriculture, livestock, industry, and household. Household surveys, and farmer, livestock owner and industry manager interviews were conducted along with collecting secondary data to develop the model. Results showed that 304 ton-N/year and 258 ton-P/year were discharged from household to the environment as food waste, excreta and greywater. Approximately 3,200 ton-N from on-site sanitation were also annually released to the environment as toilet effluent/leakage and fecal sludge. Animal manure (83 ton-N/year and 16 ton-P/year) and market waste (456 ton-N/year and 71 ton-P/year) were also observed as losses of valuable resources. Applying nutrients from animal manure, fecal sludge, and organic solid waste in the agricultural sector can reduce the pollution load to the environment, and reduce the chemical fertilizer demand in the city.
  • 寺崎 寛章, 赤尾 拓哉, 齊田 光, 福原 輝幸
    2018 年74 巻7 号 p. III_375-III_382
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究では黒色の金属強化ポリエチレン管(採熱管)を用いた野外実験を行い,太陽熱温水システムの採熱性能を評価した.加えて,採熱管-送水管-放熱管の連成解析モデルを構築するとともに,モデルの妥当性を検証し,本数値シミュレーションによるコスト削減効果を検討した.その結果,本伝熱モデルにより,採熱から温水生成に至る過程の各流体温度の挙動を概ね再現することができた.さらに本モデルを用いた数値シミュレーションにより,システム稼動時間に着目して貯湯水温の変化を調べた結果,採熱量と稼動時間の関係を定量評価することができた.なお,コスト削減効果の一例として,本システムは稼動時間を最適化することで,福井市の一般的なガス給湯コストに比べて27%削減できることも分かった.
  • 寺崎 寛章, 鈴木 遥介, 福原 輝幸, 草間 政寛, 谷口 晴紀, 田中 雅人
    2018 年74 巻7 号 p. III_383-III_390
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究では,たて編みガラス繊維織物に熱硬化樹脂を含浸させたライニング地中熱交換器(LBHE)を提案し,コア材およびライニング材の基本的な物性値を調べるとともに,掘削深度95 mの実証試験を行った.その結果,本織物は施工に必要な伸縮性および強度を有しており,またフィラー未混入のライニング材と20%混入したライニング材の熱伝導率はそれぞれ0.32および0.47 W/(mK)となった.実証試験の結果,LBHEは掘削体積の75%に膨張していることが確認できた.さらに熱応答試験(TRT)を実施し,地層の有効熱伝導率および熱抵抗を求めた結果,フィラーを20%混入したLBHEの熱抵抗(0.035 K/(W/m))は熱交換表面積が大きいために,ダブルUチューブのそれ(0.063 K/(W/m))よりも45%低かった.
  • 柿島 隼徒, 蛯江 美孝, 村野 昭人, 山崎 宏史
    2018 年74 巻7 号 p. III_391-III_398
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     本研究では,戸建て住宅に設置されている浄化槽3基を対象に,浄化槽から排出される温室効果ガスCH4,N2O排出量を1年以上にわたり調査し,季節影響を踏まえた排出特性の解析を行った.その結果,CH4は,約90%が嫌気処理部から排出されており,N2Oは,約80%が好気処理部から排出されている事が確認された.CH4排出量は嫌気処理部に流入するDO量が低くなる際に増大する傾向となった.これは嫌気処理部底部の嫌気化が進むことでCH4生成量が増大するためであると考えられた.一方,N2O排出量は水温上昇期において,槽内のBODとNH4-Nが同時に高くなる際に増大する傾向となった.これは,浄化槽内に貯留する汚泥が可溶化しBODとNH4-Nが溶出することにより,好気処理部における硝化反応(亜硝酸酸化)が速やかに進行しなくなるためであると考えられた.
  • 稲村 成昭, 蛯江 美孝, 山崎 宏史
    2018 年74 巻7 号 p. III_399-III_405
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     小型浄化槽からの温室効果ガスであるN2Oの1人当たりの排出量は,下水道に比べて,おおよそ5倍と著しく高い.そこで,浄化槽の特徴である流量変動に着目し,浄化槽における流入汚水量の時間変動を緩和する流量調整機能の有無によるN2O排出量の比較を行った.その結果,流量調整機能がある場合は,機能がない場合に比べて,N2O排出量は1/6以下に低減され,下水道とほぼ同じレベルになることが分かった.その要因として,流量調整機能がある場合,二次処理への汚水の一次的な流入汚濁負荷の集中が緩和されることにより,機能がない場合に比べて二次処理におけるORPの低下を最小限に抑えられるためと考えられた.なお,本研究を通じて,浄化槽においては,N2O排出量を制御する指標として,DOよりORPの方が適していると考えられた.
  • 山崎 宏史, 中村 颯馬, 塩原 拓実, 蛯江 美孝
    2018 年74 巻7 号 p. III_407-III_413
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     浄化槽は生活排水を処理すると共に,衛生学的に安全な水を放流するために,最終処理工程として塩素消毒が施されている.一方,現在,衛生指標として用いられている大腸菌群には自然由来の菌種も多数含まれており,糞便汚染の指標としてはより適切な指標があるという指摘がある.さらに,多量な残留塩素や塩素による副生成物による放流先への悪影響も懸念されている.そこで本研究では,塩素添加量を最小限にする浄化槽の開発に向け,浄化槽の各処理工程における衛生指標生物の除去効果と処理状況との関係を明らかにすることを目的に検討を行った.その結果,消毒を除く各処理工程において,本研究で対象とした衛生指標生物の内,大腸菌群,大腸菌,腸球菌は生物ろ過槽における担体付着微生物による好気処理能が,嫌気性芽胞菌は嫌気ろ床槽における固液分離能が,それぞれ除去に有効であると考えられた.
  • 石黒 泰, 崔 广宇, 藤澤 智成, 安福 克人, 奥村 信哉, 玉川 貴文, Joni Aldilla FAJRI, 李 富生
    2018 年74 巻7 号 p. III_415-III_422
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     合併処理浄化槽の処理水槽内水の残存有機物に関連すると報告されている粒径0.5-1 μmの粒子の構成を明らかにするため,処理水槽内水中の粒子と細菌が水質に与える影響を調査すると共に浄化槽内の粒子と細菌の量的変動を解析した.処理水槽内水の細菌数とBODの間に有意な相関がみられ,細菌が残存有機物に関連していることが示された.浄化槽内の粒子数と細菌数の変動から,嫌気ろ床において細菌以外の有機性粒子の多くが除去され,処理水槽内水に存在する粒径0.5-1 μmの粒子の多くが細菌であることが示された.クラスター分析から接触ろ床槽内水,処理水槽内水では細菌が残存有機物に最も強く関連する因子であることが示された.これらのことから浄化槽処理水の残存有機物を減らすためには,細菌を減らす必要があることが示唆された.
  • 橋本 崇史, 山崎 創史, 小熊 久美子, 滝沢 智
    2018 年74 巻7 号 p. III_423-III_431
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     重力式膜ろ過浄水法での膜透過流束がファウリング層構造に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,流束の異なる限外ろ過膜上に形成されたファウリング層中の生菌,死菌,多糖類,タンパク質を蛍光標識し,共焦点レーザー顕微鏡により観察と定量解析を行った.膜透過流束が大きいPES膜では,生菌は主にファウリング層の上部に,死菌は酸素や基質が不足する下部に分布し,多糖類は生菌の密度が高い領域に分布していた.このファウリング層は,凹凸や比表面積が大きく,厚みがあるが空隙が大きい構造をしており,ろ過抵抗の上昇が抑えられた理由と推察された.PAN膜では全ての成分が膜面近傍に密に分布し,これがろ過抵抗の上昇を引き起こしたと考えられた.これらの結果から,膜透過流束がファウリング層構造に大きな影響を及ぼすことが示された.
  • 野口 智代, 長岡 裕, 鮫島 正一, 豊岡 和宏
    2018 年74 巻7 号 p. III_433-III_443
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     浸漬型MBRにおいて,散気管と膜ユニットの間に山型邪魔板を設置し,散気管で発生した気泡が直上だけを上昇するのではなく,膜ユニット内にできるだけ均一になるように分散させ,膜面に大きなせん断力を均一に働かせることを可能とする曝気洗浄方式を考案し,膜ユニット内の気泡流の流れ場をPIVによって測定するとともに,その膜面洗浄効果について,実験室規模のセラミック平膜を用いて測定した.山型邪魔板と散気管との距離を離した条件で,発生する気泡を空間的に分散させることによって,膜ユニット内に比較的空間的に均一で大きな上昇流速を発生させ,膜ユニット全体としてファウリングの進行を抑制できることがわかった.また,膜近傍の空間的な流速分布とファウリング発生後の膜面の汚泥付着状況に関連性があることも確認できた.
  • 滝沢 智, 鳥居 舜, 橋本 崇史, 天野 冴子, 浜中 直樹
    2018 年74 巻7 号 p. III_445-III_455
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー
     膜ろ過浄水施設の多くで採用されている中空糸ろ過膜は,使用年数の経過により破断する可能性があるため,膜の劣化状況を把握し,適切な膜交換を行う必要がある.そこで本研究では,膜破断データから将来の破断本数を予測し,適切な膜交換時期を推定することを目的として,実施設の膜破断データを解析した.その結果,全国の膜ろ過浄水場の原水水質から膜ろ過工程に期待される濁度や大腸菌の対数低減率(LRV)を2.26と設定し,これを上回るLRVを保つための膜破断率を0.028%と推定した.一方,破断した膜モジュール内の流れモデルから,LRVは膜の破断位置に大きく影響されることを示した.実施設の中空糸膜破断データを,線形モデル,二項分布モデル及び一般化線形モデルにより解析することで,これらのモデルの特徴と中空糸ろ過膜の交換時期の推定法を提示した.
feedback
Top