2019 年 75 巻 6 号 p. II_151-II_159
本研究では,防災分野における気候変動適応策を題材としてオンライン熟議実験を実施し,専門知を提供しながら参加者間の議論を促し,事前・事後の質問紙調査から,参加者の認知の変化や適応策の選好を明らかにした.得られた主な知見は次のとおりである.第1に,熟議は様々なトピックに言及する形で適応策オプションに関する議論や検討が進んでいったことが看取された.第2に,気候変動影響実感については,事前・事後ともに,健康被害と風水害の認知が大きく,特に事前の認知が低かった水不足や水質悪化の認知が大きく高まった.第3に,適応策のうち自助については理解が深まったが,特に転換策は事後に否定的な反応がより多くなった.