2020 年 76 巻 4 号 p. 63-71
宮城県の汽水湖である長面浦において,数値モデルと植物プランクトン群集の類似性をもちいて,海水交換や河川水の流入状況を調べた.長面浦では数値モデルから下層ほど海水の滞留時間が長く,特に夏季を中心に極めて長くなると試算された.一方,その時期の長面浦の中層から下層の植物プランクトン組成も周囲と異なっていたことから,植物プランクトン群集の類似性は,海水の滞留時間と関係することが示された.また,長面浦の上層に含まれる淡水産植物プランクトンの割合は必ずしも塩分の低下と一致しておらず,長面浦の上層の塩分変動には河川水だけでなく,沢水の流入が影響している可能性が示唆された.これらの結果は,長面浦のような汽水湖では海水交換や淡水の流入状況を把握する上で植物プランクトン群集を調べることが役立つことを示している.