2021 年 77 巻 7 号 p. III_169-III_178
都市下水処理水の灌漑で栽培されたタンパク質含有率の高い飼料用米を用いて,肥育後期豚の飼育試験を行った.トウモロコシ(エネルギー源)と大豆粕(タンパク質源)を主体とする一般的な配合飼料に対して,この高タンパク米でトウモロコシを置き換える一方で大豆粕の割合を低減した配合飼料を試験に用いた.その結果,下水処理水栽培米を給与すると枝肉成績のうち枝肉歩留が有意に上昇し,枝肉の格付でも上物の割合が高くなった.肉質についても慣行的に生産した豚肉と遜色がなかった.鶴岡浄化センターをモデルとして,下水処理水を近隣の水田に灌漑し,収穫された高タンパク米を養豚に用いる事業計画について経済評価を行ったところ,下水道事業としての年350万円の投資は,稲作農家と畜産農家の年間収益を合計で534万円(水田活用の直接交付金を含む)増やす効果があった.