2021 年 77 巻 7 号 p. III_375-III_383
下水消化汚泥からの有害重金属類の低減手法の開発を目指し,繊維状キレート剤を封入したナイロンメッシュバッグを用いた酸性模擬廃水および汚泥中の溶解性重金属の吸着と脱着に及ぼすpHの影響を検討した.メッシュバッグを介してもキレート剤によって模擬廃水中の重金属を吸着できた.pH 1の希硫酸によって繊維状キレート剤に吸着した重金属を脱着できた.pHを2に調整して汚泥から溶出させた重金属を対象とした場合,メッシュバッグによる吸着に適したpHは,Cd,Cr,NiおよびZnで4,Pbで3,Cuで2.5であった.溶出した重金属の一部はpHの上昇によって汚泥浮遊物に再吸着するが,金属によってはキレート剤の存在によって再吸着が抑制された。汚泥中の主要金属は,Niを除いて微量重金属のキレート剤への吸着を妨げなかった.