2011 年 67 巻 1 号 p. 160-173
鉄道沿線に数多く存在する斜面を対象として,降雨時に発生する土砂災害を防止する対策を効果的に実施するためには,各斜面の耐雨性のみならず災害発生時の営業損失や復旧費なども考慮して,各斜面の災害に対する危険度を定量的に評価し,この結果を用いて防災対策の優先順位や方法を決定するのが望ましい.そこで,本研究では,鉄道沿線斜面において降雨時に発生が懸念される土砂災害やそれが鉄道運行に与える影響をリスクとして定量的に評価する方法について論じた.具体的には,鉄道で実施されている運転規制を考慮して斜面の崩壊発生確率分布や年間降雨頻度期待値分布を作成し,これらをもとにリスクを算出する方法を提案した.さらに,リスク算出結果を利用した防災対策の意思決定方法を計算事例により示した.