2016 年 72 巻 2 号 p. 155-163
東北地方太平洋沖地震で発生した鉄道切土斜面の崩壊事例を対象として,実務設計的な視座で再現解析を行った.これまで粘性土地山は,一般に盛土に比べて安定性が高く,耐震性も高いとして取り扱われてきたが,粘性土高切土が崩壊した当該事例は復旧に多大な時間を要し,今後の営業鉄道路線の設備管理の観点においても無視できない崩壊規模であった.そこで,現地での地盤調査と不撹乱試料の室内土質試験を実施し,これらの結果と近傍で観測された地震動を用いて2次元地震応答解析を行った.さらに,室内土質試験結果に基づいてすべり面で発揮されるせん断強度の低下特性をモデル化し,これを考慮した修正Newmark法により地震時変位量を算定した.その結果,当該事例の崩壊規模を概ね再現することができた.