2019 年 75 巻 3 号 p. 316-335
もたれ壁は鉄道土留め擁壁として多数構築されており,耐震補強が重要である.本研究では,もたれ壁の破壊形態を明らかにし,効率的な耐震補強工法を提案することを目的として振動台実験および解析的検討を行った.実験的検討に先立ち実施した被害事例分析では,もたれ壁の脆性的な破壊形態として,転倒破壊を抽出した.それを踏まえて実施した振動台実験では壁面上部の地山補強材による転倒破壊の抑制効果が高いことが明らかとなった.また,すべり面の発生位置と土圧の大きさに着目して実験結果を分析し,補強効果の評価法を提案した.そして,提案手法を用いて兵庫県南部地震で被災したもたれ壁を対象とした試解析を行い,比較的疎な地山補強材の打設で既設もたれ壁の耐震補強が可能であることを明らかにした.