抄録
本研究は結氷下の水質観測やシミュレーションに基づき,結氷下の水質挙動を明らかにし,気候変動による影響を検討した.観測結果から結氷による再曝気の遮断に伴い底層が無酸素化して栄養塩が溶出し,それが解氷まで蓄えられることがわかった.一方,気温上昇により結氷期間が短縮され,蓄えられる栄養塩が減少するが,解氷後に植物プランクトンの増殖が促進され,BODが上昇傾向を示した.これらの実態を反映し,気候変動の影響を検証して将来予測を行うために,結氷を勘案できる水質シミュレーションモデルを構築した.これによる計算結果から気温の上昇により結氷期間が短縮し,春季のBODが増加することが示され,観測結果と一致した.これらの結果より結氷する積雪寒冷地の水域において気温上昇が春季の富栄養化を促進することが示唆された.