抄録
東日本大震災において津波による被害を受けた仙台平野沿岸域の建物および海岸林を対象に,海岸林の存在が建物被害程度へ及ぼす正負双方を含む影響を検討するために,建物被災区分と海岸林の林帯幅との関係性を評価した.海岸林の林帯幅は,各建物から最寄りの汀線までに存在する海岸林域の幅と定義した.そして,海岸林の林帯幅に応じた建物の被災区分を建物の構造種別,汀線までの距離を考慮して整理した.海岸林の林帯幅が広く確保された地域の木造建物の被災区分は,海岸林が広く確保されていなかった地域の木造建物の被災区分と比較して軽度であった.また,主に木造建物においては,汀線までの距離・建物の標高などの影響を控除した場合も,海岸林の林帯幅と建物の被災区分の軽減効果との間に相関が存在することを明らかにした.