抄録
アンサンブル予測データと簡易的な洪水規模評価手法を組み合わせて,台風による大雨洪水リスクをシナリオとして提示する手法を検討した.解析には51個のメンバーからなるECMWFアンサンブルデータのうち気圧と雨の予測値を用いた.気圧データから抽出した51個の予想台風進路を,経路と速度を考慮したクラスター分析により3種類のシナリオに分類した.各台風進路による予測雨量についてはバイアス補正を行い実測値との適合度を高め,洪水リスクは洪水到達時間内の平均降雨強度によって近似的に評価した.本手法を平成27年9月関東・東北豪雨に適用した.その結果,予測シナリオの一つは実際の降雨分布と洪水規模を良好に予測できていた.また,台風18号の進路がわずかに西へシフトするシナリオでは多摩川における既往最大規模の洪水を予測していた.