抄録
洪水被害と浸水深との関係性を示す被害関数は,自然災害リスクを計算する上で重要であるが,その研究事例は少ない.既往研究では,家屋損害は主に氾濫流の数値解析あるいはヒアリング調査により算出されてきている.損害保険会社は膨大な保険金支払情報を所有しており,それらを活用することにより,実被害情報を被害関数に反映することが期待できる.そこで本研究では,洪水被害関数の蓄積を目的に,平成27年9月関東・東北豪雨における保険金支払情報を活用し,建物および内容物の洪水被害関数を構築した.まず,保険金支払情報を入手し,物件毎に損害率を計算した.次に,洪水の再現計算を行い,損害率と推定浸水深のデータセットを作成した.最後に,建物・内容物別に被害関数を構築した.