抄録
洪水時の河川堤防の破壊危険性を理解し,弱点箇所の堤防強化や危機管理対策を進めていくことは,極めて重要な治水課題である.著者らはこれまでに堤体浸透に起因した浸透,裏法滑り破壊危険確率の算定法及び堤防脆弱性指標を提案した.本論文では,基盤漏水に起因した堤防破壊を対象とし,洪水時における基盤透水層内の浸透水の挙動と圧力水頭分布を準二次元浸透流解析の枠組みで見積もることで,被覆土の盤膨れの発生と,パイピング発生時の砂の抜け出しによる堤体の安定性低下を評価する手法を提案する.そして本手法により,実際に洪水中に起こったパイピングによる堤防破壊及びその危険性を説明できることを示し,今後の検討課題を論じている.