抄録
本研究では,2016年台風10号により発生した岩手県岩泉町乙茂地区における洪水氾濫状況を調べるために,現地調査を行うととともに,氾濫発生状況を把握するための洪水氾濫シミュレーションを行った.氾濫シミュレーションとしては,周囲の沢からの流入を捉えるための流出解析と洪水氾濫状況把握のための平面二次元解析を行った.その結果,今次水害の乙茂地区では,17時台の沢からの洪水と18時台以降の小本川上流域から洪水,という2段階の浸水が発生していた.一段階目の初期浸水時では流速が0.5~1.0m/sと早く避難が容易でない水理条件であった.そのため,浸水発生前の避難の重要性が改めて示唆された.