抄録
洪水被害に対しては避難判断に重要な初期浸水過程を明示することが重要であるが,排水河川が初期浸水過程に及ぼす影響は未解明である.本論文では洪水氾濫シミュレーションにおける排水河川の取り扱いが初期浸水過程に及ぼす影響を見ることを目的に,排水河川として中川や綾瀬川を対象とする利根川氾濫シミュレーションを実施した.排水河川有と無の計算結果を比べたところ,初期浸水過程ばかりでなく,洪水フロントの南下速度や,氾濫域全域の浸水にかかる時間も排水河川有の方が排水河川無のケースよりも早くなった.また,洪水氾濫シミュレーションにおける初期浸水過程に対して排水河川の扱い方(扱う数や規模)が大きく影響されることが示唆された.