抄録
近年の異常な降雨・出水の頻発を受け,治水機能を有さない発電ダムも貴重な防災資産として洪水調節機能が求められるようになった.発電ダムで洪水調節機能を付加するには,信頼性の高い予測が必要となり,熊野川流域の発電ダムでは,気象庁GSMを活用した洪水被害軽減対策を実施している.気象庁GSMは,予測リードタイムが長く,早期に洪水の発生を予測できるが,予測精度が必ずしも高くなく,過小予測の場合も多い.本研究では,更なるダム運用の高度化に向けて,気象庁の週間アンサンブル予報のアンサンブルメンバ間のばらつきや気象庁GSMの空間的ばらつきを評価することで,気象庁GSMによる流域雨量の過小予測傾向を事前に把握し補正する手法を考案し,実運用への適用性を評価した.